日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
増田 丈浩
マウスピース矯正と裏側矯正の違いは何?
矯正治療をする上で、なるべく目立たないようにしたいという患者さんは多いです。
最近だと、裏側矯正やマウスピース矯正は、目立たず人気があります。
マウスピース矯正は、インビザラインが確実性が高く人気になります。
皆さん、どのような違いがあるか質問もありますのでまとめました。
目次
1.裏側矯正とマウスピース矯正の見た目は?
見た目は結論から言うと、どちらもきれいなため、あまり変わりません。
裏側矯正の方が歯の表面には何もつかないため、より自然でしょう。
ただし、大きく笑うと裏の装置が見えることはありますので、知っておいてください。
マウスピース矯正は歯全体をマウスピースで覆います。
ただし、マウスピースは透明のため、ほとんど他人からはわかりません。
少し光沢はありますが、歯が綺麗に見えるという人もいます。
インビザラインでは、歯の表面にアタッチメントという突起物がつきます。
このアタッチメントは歯の色をしています。
そのため、このアタッチメントがついていても、ほとんど他人からは気付かれないでしょう。
《関連情報》インビザラインのアタッチメントって目立つ?痛い?
2.裏側矯正とマウスピース矯正は発音しにくい?
マウスピース矯正は歯の表面を覆いますが、厚みは薄いため最初は違和感あります。
ただし、ほとんどの方がすぐ慣れます。
そのため、発音しにくいなどは基本的にありません。
こちらはインビザラインでも同じです。
裏側矯正はどうでしょうか?
歯の裏側に装置が装着されるため、話すたびに装置が舌に当たります。
これによって話し難かったり、発音しずらかったりする場合があります。
参考論文
日本舌側矯正歯科学会会誌/舌側からの矯正装置の開発
3.痛みに違いはある?
まず裏側矯正もマウスピース矯正も、歯を動かすため、痛みは伴います。
ただし動かす量は違ってきます。
マウスピース矯正、特にインビザラインの場合、1枚のアライナーで動かす量は0.25mmとかなり少ないです。
そのため、一般的にはワイヤーを使った裏側矯正よりは歯を動かす際、痛みは少ないと言われています。
また、マウスピース矯正の方はアタッチメントという装置はつきますが、それ以外には装置はつきません。
そのため、装置がデコボコしていないため、口内炎はほとんどできません。
一方、裏側矯正は歯の表面にはほとんど装置はつかないため、唇や頬粘膜に口内炎ができることはほとんどありません。
ただし、裏側に装置がつくので、舌が痛くなったり、口内炎ができる可能性はあります。
そのため、痛みに関してはマウスピース矯正の方が少ないと思われます。
《関連情報》歯列矯正って痛いの?痛みは対処できれば怖くない!
4.裏側矯正とマウスピース矯正は取り外せる?
裏側矯正は装置を接着剤で歯に装置をつけます。
そのため、取り外すことはできません。
終わるまで外せないですが、ちゃんと予定通り終わることが多いです。
一方、マウスピース矯正は取り外しができます。
これは嬉しいことですが、外す時間が長いと、歯が予定通り動きません。
使用する時間は、おおよそ1日に20時間以上が目標になります。
なのでマウスピース矯正の場合は、ご飯を食べる時と歯を磨くとき以外は、使用するようなイメージです。
面倒くさがり屋や長時間使用する自身がない人は、裏側矯正の方がいいかもしれません。
5.虫歯、歯周病のリスクの違い
まず、裏側矯正の虫歯や歯周病のリスクはどうでしょうか?
裏側は唾液の循環はいいため、表側よりは虫歯のリスクは低いです。
ですが、裏側矯正は歯ブラシが目で見えないため、磨きづらいです。
《関連情報》矯正と虫歯の関係|いつ虫歯を治すかなど疑問を全てまとめました!
そのため、汚れが残りやすく、虫歯や歯周病のリスクは上がってしまいます。
汚れが溜まると歯茎が腫れて痛い場合も出てきます。
《関連情報》矯正治療でおきる歯茎のトラブルは??対策があれば怖くない!
一方、マウスピース矯正はどうでしょうか?
マウスピース矯正は取り外しも可能なため、歯ブラシがかなり快適にできます。
これによって、虫歯や歯周病のリスクは少ないです。
その他にも矯正歯科治療にはリスクもありますので、理解しておいて損はありません。
《関連情報》矯正治療のリスク、デメリット
6.裏側矯正とマウスピース矯正はゴムの使用は必要?
矯正治療をする際は、顎間ゴムといって、患者さん自身に取り外しができるゴムを使用してもらうことがあります。
この顎間ゴムは裏側矯正、マウスピース矯正でも基本的には使用することが多いです。
この顎間ゴムは実は非常に重要で、先生の指示通り使用しないと、上手く治らないことがあります。
そのため、先生が指示されたらしっかり使用しましょう。
《関連情報》歯列矯正で使用するゴムってどんなもの?
7.インプラント矯正の可否
インプラント矯正といって小さいスクリューを埋入して行う矯正方法があります。
このインプラント矯正はメリットが非常に大きく、矯正の治療期間が短くなったり、治療ゴールがより良い状態になったりします。
このインプラント矯正は、裏側矯正、マウスピース矯正、どちらでも対応が可能です。
通常は先ほどお伝えした、顎間ゴムというものを使用する場合が多いですが、インプラント矯正をするとゴムを使用する期間がかなり減少します。
これもインプラント矯正のメリットになります。
《関連情報》インプラント矯正|目的と疑問をまとめました!
8.裏側矯正とマウスピース矯正の食事に関して
食事のしやすさに違いはあるのでしょうか?
マウスピース矯正は装置が外せますので、通常通り美味しく食べれます。
ただし、歯が動いているため、噛むと痛い場合もあります。
こちらは裏側矯正、マウスピース矯正、どちらにも言えることになります。
食べ物は慣れるまで、柔らかいものを食べた方が痛みは少ないでしょう。
裏側矯正の場合は少し食べにくい場合があります。
噛み合わせが深い場合だと、治療上前歯しか当たらないようにして矯正治療をすることがあります。
そうすると、奥歯が噛んでいないため噛めません。
下記の参考論文の中には、前歯しか噛めない状態の時は患者ア ンケート結果でも辛かった事の上位にあげられています。
参考論文
日本舌側矯正歯科学会会誌/舌側矯正治療における患者管理
あとは裏側矯正だと、噛むことによって装置が外れてしまうこともありますので、注意して食べるのも大事です。
9.治療期間の違いは?
矯正治療期間に違いはあるのでしょうか?
結論から言うと、マウスピース矯正も裏側矯正も期間は変わりません。
《関連情報》矯正治療の期間はどれくらい?
特に、最近は技術の進歩がすごいため、マウスピース矯正の方が早いことも多いです。
またインビザラインは、オーソパルスという加速装置が併用可能になります。
通常はアライナーと呼ばれるマウスピースを、インビザラインは1週間に1回交換していきます。
オーソパルスを使用すると、3日に1回の交換になるため治療期間を短くすることが可能なのです。
《関連情報》矯正を短期間に早く終わらせる方法とは!?
また、矯正することによって得られる様々な効果があるのです。
見た目だけが良くなるのではなく、機能的にも良くなっていくとなると嬉しくなりませんか?
知っておくと、矯正をするときのモチベーションも上がるでしょう。
《関連情報》矯正治療の効果について|見た目だけではなく様々な効果があります!
10.対応できる症例
症例で違いはあるのでしょうか?
裏側矯正はワイヤーを使用して治療を行います。
そのためワイヤー上を歯が動くため平行移動が得意です。
抜歯する症例は平行移動が必要なため、裏側矯正で対応が可能になります。
基本的にどんな治療でも対応が可能です。
マウスピース矯正はどうでしょうか?
インビザラインであれば、アタッチメントという突起物も付きます。
このアタッチメントで平行移動は可能ですが、得意な動きは傾斜移動といって傾ける移動になります。
インビザラインは受け口、出っ歯、ガタガタなど、様々な症例で対応ができます。
《関連情報》インビザラインで出っ歯は治らない?
また、開咬といって前歯が噛んでいない症例は、インビザラインは非常に得意です。
なぜかというと、大臼歯の圧下といい、骨の中に歯を押し込む移動が得意だからです。
これは裏側矯正では、あまりできません。
また、インビザラインは奥歯を後ろに移動させることが得意です。
こちらも裏側矯正は、あまり得意ではありません。
奥歯を後ろに移動させることで、軽度の受け口、出っ歯は、歯を抜かないで矯正治療することができます。
このおかげで、歯を抜かずに矯正治療する症例がだいぶ増えました。
《関連情報》なぜインビザラインは歯を抜かない非抜歯の治療が得意なのか!?
少し不向きな症例は、歯を長い距離を平行移動させる症例になります。
先ほどお伝えしたようにマウスピース矯正は傾斜移動が得意だからです。
そのため、移動距離が長いと途中で倒れてしまう可能性があるからです。
症例でいうと出っ歯の具合が大きかったり、口元の突出を治す症例になるでしょう。
しかし歯を抜く治療はインビザラインではできないのかというとそうではありません。
最近は治療も確立してきたため、抜歯症例でもきれいに治るようになってきました。
ただしどちらも歯並びをきれいにすると口元やEラインはきれいになります。
《関連情報》矯正でEラインや唇が変化するって本当?
また子供の矯正治療でも、インビザラインで行うことも増えてきました。
《関連情報》インビザラインで子供の矯正はできる??
11.裏側矯正とマウスピース矯正のホワイトニングは?
マウスピース矯正の場合、ホワイトニングは同時にできます。
これは歯並びをきれいにしながら、歯の色も白くできるのでかなりのメリットになります。
裏側矯正の場合は、矯正治療中はマウスピースをはめることができません。
そのため、基本的には治療が終わってからホワイトニングをしていきます。
ですが、オフィスホワイトニングといって病院で薬液を塗るタイプであれば裏側矯正でも可能になります。
《関連情報》矯正治療とホワイトニングは同時にできる?|費用や順番もまとめました
12.値段の違い
マウスピース矯正とワイヤー矯正の値段に差はあるでしょうか?
マウスピース矯正のメインはインビザラインのため、インビザラインとしてお話しします。
費用は一般的に、裏側矯正の方が費用はかかるでしょう。
裏側矯正は調整に時間もかかるため、技術料といったところで費用に上乗せされています。
調整料も裏側矯正は高いことが多いです。
ただし、矯正治療は自費治療のため、医院ごとに費用は違います。
ただし、費用は安ければいいというわけではないため、治療がうまい良い矯正歯科を選択しましょう。
《関連情報》良い矯正歯科の選び方|歯科医師が見る8つのポイント
まとめ
裏側矯正とマウスピース矯正は様々な違いがあります。
長所、短所を検討してご自身に合うものを選ぶのが一番いいでしょう。
実際、マウスピース矯正はいまいち信じられない、という人も多いです。
そのような方は、マウスピース矯正の効果についてまとめてあるので下記をご参考ください。
《関連情報》インビザラインは効果がある?ない?|疑問に答えます!
最後に表で簡単にまとめておきます。
裏側矯正 | マウスピース矯正 | |
審美性 | ◎ | ◎ |
痛み | あり | あり(少し弱い) |
取り外し | 不可 | 可能 |
虫歯、歯周病のリスク | やや高い | 低い |
ゴムの使用 | 必要 | 必要 |
インプラント矯正 | 可能 | 可能 |
治療期間 | 2〜3年 | 2〜3年 |
対応できる症例 | ほぼ可能 | 抜歯症例は△〜◯ |
値段 | 高い | 裏側よりは安い |
最後までご覧頂きありがとうございました。