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インプラント矯正|目的と疑問をまとめました!

:2021年2月17日 :2020年1月13日

                    

日本矯正歯科学会認定医 歯学博士

増田 丈浩

インプラント矯正のポイントをイメージ

 

インプラント矯正は今までの常識をくつがえしました

インプラント矯正はどんな時に必要なのでしょうか?

 

このインプラント矯正は、矯正用アンカースクリューというものを使用します。

『インプラントって怖そう』

『意味あるの?』

など様々な疑問があるかもしれません。

よくある疑問を順番に説明していきます。


目次

1.インプラント矯正とは?

インプラント矯正に使用するスクリュー

インプラント矯正とは、矯正用アンカースクリューという非常に小さいスクリューを骨に埋入し、埋め込んだスクリューを利用して、矯正治療を行います。

これにより、今までできなかった治療ができるようになりました。

歯が抜けてしまった時に使用する、デンタルインプラントとは全く別物になります。

矯正治療が終わったら外しますし、トラブルがほとんどないものになります。

2.インプラント矯正は痛みや腫れはあるの?

歯が痛くて顔を押さえている女性

まず何と言っても、痛みや腫れが気になると思います。

実際はどうなのでしょうか?

矯正用アンカースクリューはデンタルインプラントと違って、非常に小さく痛みもほとんどありません。

歯茎をめくることなく処置ができますので、ほとんどの方が痛み止めも飲みません。

もちろん念のために、化膿止めのお薬をお出ししますが、化膿した経験はありません。

処置時間も大体5分くらいで終わってしまいますので、『こんなものか』と拍子抜けするかもしれません。


《関連情報》インプラント矯正とデンタルインプラントの違い

3.インプラント矯正でどのような移動ができる?

インプラント矯正で可能なことを表すイメージ

インプラント矯正には、どのような移動ができるようになったのでしょうか?

従来の矯正ではできなかったことができるようになりました。

順番にお話しします。


強力な固定源

多くのインプラント矯正が『歯の動きを止める』が目的になります。

『歯の動きを止める』ができるとより質の高い治療が可能になります。

具体的には口元がさらに中に入るため、Eラインが良くなります。


《関連情報》矯正でEラインや唇が変化するって本当?


矯正治療では抜歯をして治療する場合があります。

 

ガタガタがあったり前歯が出ていたりと、様々なケースが考えられますが、共通しているのが歯を抜いたスペースに前歯を動かしていきます。


前歯を後ろに移動させる時に、どうしても奥歯も前に来てしまいます。

図で示します。
奥歯が20%移動し前歯が80%移動する

だいたい20%は奥歯が前に来てしまいます。

そのためアンカースクリューを使用します。

アンカースクリューを使用し前歯を中に入れる

このアンカースクリューを使用することによって奥歯が前に来なくなります。

これによって前歯を全て後ろに移動できるのでより高い治療ゴールが可能になります。

関連論文
インプラントアンカレッジシステム

非抜歯になる可能性が減少(歯を後ろに移動)

このアンカースクリューを使用すると歯を後ろに移動しやすくなります。

どういうことでしょうか?

アンカースクリューを奥歯に使用する

上図のように歯の後ろにアンカースクリューを埋入します。

このアンカースクリューを利用して、歯を後ろに移動させます。

従来は歯を後ろに移動させるのが難しかったですが、可能となりました。

これによって今までは抜歯していた症例も、歯を抜かずに治す症例が増えます。

関連論文

歯科学報/矯正用インプラントを用いて非抜歯治療を行った上下顎 叢生症例

大臼歯の圧下

インプラント矯正では歯を圧下できるようになりました。

アンカースクリューを奥歯を圧下させる目的で使用

上図のようにアンカースクリューを使用して、大臼歯を圧下します。

圧下とは、歯を骨の中に埋める方向に動かすことです。

大臼歯の圧下ができると、開咬といって前歯が噛んでいない症例も治療ができるようになります。

開咬は重度だと手術しないといけなかったですが、インプラント矯正のおかげで手術しなくて済む場合もあります。

また、噛む相手がいない歯はどんどん伸びていきます。

 

歯が伸びてくると噛み合わせが崩れたり、また歯がない所に入れ歯やブリッジ、インプラントを入れようとしても、噛む歯が伸びてきてしまっている為、隙間がなく治療ができません。

 

そのために伸びている歯を圧下(歯を骨の方向へ移動させる)させることが必要です。

 

従来であれば、全体的に装置をつけることが多かったのです。

 

しかし矯正用アンカースクリューを用いることにより、部分的にもしくは矯正装置なしで圧下することも可能となりました。

 

この圧下という移動様式は、矯正治療で一番難しく時間がかかる処置になるので、アンカースクリューで確実に治療ができるようになります。

関連論文
骨格性の開咬を伴う下顎後退型上顎前突症例

 

前歯の圧下

先ほどは大臼歯を圧下しましたが前歯もできます。

アンカースクリューを前歯を圧下させる目的で使用
上図の場所にアンカースクリューを使用して、インプラント矯正することによって前歯を圧下させることができます。

噛み合わせが深い症例や、ガミースマイルといって笑った時に歯茎が見える症例に対して、使用します。

関連論文
ガミースマイルに対するインプラントアンカーを用いた矯正治療

4.インプラント矯正のメリットは?

インプラント矯正を使用するメリット、デメリット

まずはインプラント矯正をしない場合、どのようなことが従来は必要であったのでしょうか?

どういうことかというと、抜歯をする際、奥歯と前歯を引っ張りあいをしてガタガタや前歯が出ているのを治療してい来ます。

ただし前歯だけが中に入るわけではありません。

歯を動かすと作用反作用が生じる

力学的に作用反作用の法則が働き、前歯を中に入れたいにもかかわらず、奥歯も前に来てしまいます。

 

そうすると出っ歯が残ってしまうことになります。

そうならないように様々な工夫をして治療を行なってきます。

・患者さんにゴムを使用してもらう

 

・ヘッドギアという装置を使用してもらう


この2つを患者さんにしてもらっていました。

この2つは患者さんの負担が大きかったのですが、インプラント矯正をすることによってこの2つをほとんど使用しなくて良くなりました。

これが最大のメリットでしょう。

ゴムとヘッドギアも順番に説明していきます。

 

・患者さんにゴムを使用してもらう

 

矯正で患者さん自身にゴムを使用してもらう

これはゴムを使用することにより、奥歯が前に来ないようなベクトルがかかる方向に、患者さんにゴムをかけてもらいます。

 

このゴムは効果的なのですが、患者さんの負担は大きいです。

 
また口を開いた時にゴムが見えるため、見た目を気にされる方には抵抗がある場合があります。


《関連情報》矯正歯科治療で使用するゴムの疑問は全て解決!


・ヘッドギアという装置を使用してもらう

ヘッドギアという矯正装置

 

ヘッドギアというのは口の外まで出る装置で頭を固定源にして、ゴムでこのヘッドギアというものを使用して、奥歯が前に来ないようにする装置になります。

 

基本的に寝ている時に使用するものですが、違和感が強いため慣れるまで時間がかかる方も見えます。

5.インプラント矯正は治療期間が短くなる

インプラント矯正の治療期間をイメージ

インプラント矯正をすると、抜歯症例は治療期間も短くなります。

どういうことでしょうか?

まずは従来の方法を図に示します。

矯正で前歯を中に入れる手順

前歯は犬歯まで含めると左右合わせて6本あります。

 

まずは犬歯と奥歯を引っ張り合い、犬歯を中に入れていきます。(図の①)

 

犬歯が中に入ったら今度は奥歯、犬歯と前歯4本の引っ張り合いになります。(図の②)

 

前歯6本をまとめて中に入れずに、分けて中に入れることによって奥歯が前にこないようにします。
それでも奥歯の移動量を0にするのは難しいです。
 
インプラント矯正により、奥歯の移動が0にできるので、前歯6本をまとめて中に入れる事ができるようになりました。

矯正で前歯を同時に移動させる

まとめて移動できる分、矯正の治療期間も短くできます。

ではどのくらい短くなるのでしょうか?

歯は1ヶ月にだいたい1mm移動します。

小臼歯を抜歯をするとおよそ7mmの隙間ができます。

そのため、インプラント矯正をしない場合は隙間を埋めるのに2回に分けて行うので、14ヶ月かかります。

インプラント矯正をすると、1回で前歯を移動できますので7ヶ月で移動が完了します。


《関連情報》矯正治療の期間はどれくらい?


他にも矯正治療を短くする方法がありますので参考にしてください。


《関連情報》矯正を短期間に早く終わらせる方法とは!?

6.インプラント矯正の失敗とは?

インプラント矯正の失敗をイメージ

インプラント矯正が失敗することはあるのでしょうか?

以下に起こりうるトラブルを列挙します。

・アンカースクリューが歯根に接触

・アンカースクリューの破折

・アンカースクリューの動揺、脱落

・周りの粘膜が感染

・粘膜の腫脹や痛み

・粘膜、骨の過形成

上記のようなトラブルが起きる可能性はありますが、最初の診断がしっかりできていれば、ほとんど生じないので心配いりません。

上記で一番起きる失敗は、アンカースクリューの動揺、脱落になります。

起きる割合は20人に1人くらいなので、5%くらいのイメージになります。

ただし脱落しても、5分ほどですぐに再埋入できるので問題ありません。

7.インプラント矯正の費用

インプラント矯正の費用をイメージ

インプラント矯正の費用はそこまで高くないです。

ただし、自費診療のため医院ごとに費用が違います。

1本〇〇円の医院もあれば、インプラント矯正自体の費用が決まっており、何本埋入しても費用が同じ歯科医院もあります。

脱落した際に、費用が発生するか聞いておくと良いでしょう。

また、インプラント矯正も医療費控除の対象になりますので、しっかり申請しましょう。


《関連情報》矯正治療は医療費控除をしないと損します!

8.アンカースクリューを抜くときは痛い?

アンカースクリュー

アンカースクリューを埋入するときは痛くないですが、外すときはどうでしょうか?

実は、外すときはもっと痛みはないです。

埋入するときは麻酔が必要なのですが、外すときは麻酔すら必要ありません。

そのため、負担はほとんどありません。

9.アンカースクリューを抜いた後の穴はどうなる?

インプラント矯正が終わった後どうなるかを連想

アンカースクリューを抜く際は、痛みがない事がわかりました。

では抜いた後の穴はどうなるでしょうか?

実はすぐに埋まってしまいます。

次の日には穴が塞がっています。

そのため、食べ物が詰まったりすることもありませんので、ご安心ください。

ただし、骨がしっかり修復されるまでは3ヶ月から6ヶ月かかりますが、その間、特に影響はありません。

まとめ

インプラント矯正は非常に有効な方法です。

従来であれば、顎間ゴムやヘッドギアといった補助道具を患者さんに使用してもらっていましたが、このような装置を使う必要がなくなりました。

また、処置も非常に簡単ですぐ終わりますので、患者さんも安心できます。

適応症例であれば治療期間も短くなり、より質の高い治療ゴールになるのでぜひ検討してみましょう。

また、このインプラント矯正はマウスピース矯正にも使用できるところも優れものです。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

 

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日本矯正歯科学会認定医 歯学博士


増田 丈浩