矯正専門医ブログ

出っ歯の矯正|原因から治療法が決まります!

:2021年1月15日 :2020年1月17日

                    

日本矯正歯科学会認定医 歯学博士

増田 丈浩

治療を説明する女性のイメージ


出っ歯(上顎前突)の矯正治療

主に上の前歯が前に出ていて、目立っている状態の事を「出っ歯」と呼んでいます。

 

下の前歯との隙間が6mm以上あると当てはまります。

 

学校歯科検診の中にもちゃんと項目としてあります。


『出っ歯が気になる』

『前歯が邪魔で口が閉じにくい』

色々な悩みがあると思うので順に説明していきます。

目次

1.出っ歯はいつから矯正治療したらいいの?

出っ歯の治療はいつからか考えている時計に乗っている人

出っ歯の矯正するタイミングは、受け口とは違い、少し遅くても間に合います。

大体、上下の前歯がそれぞれ4本萌出した段階からすれば良いかと思います。

また少し遅くても、身長が伸びる時期に矯正装置の効果が出れば、十分な治療結果を出せます。


《関連情報》子供の矯正は何歳から?小児矯正のタイミングをまとめました


子供の時から矯正治療をする最大のメリットは、歯を抜く可能性が減ることです。

また骨格的な改善もできるので見た目も良くなります。


大人の治療と子供の治療では、治療方針が変わってきます。

早期に治療が可能であれば、大人の矯正から始めるより、子供からした方が有利の場合が多いです。


《関連情報》子供の矯正と大人の矯正の違いは何?|疑問をまとめました

2.出っ歯の治療期間はいつまで?

出っ歯の治療期間を連想する時計

出っ歯の矯正治療はいつまでするのでしょうか?

治療はⅠ期治療とⅡ期治療に分かれるのですが、Ⅱ期治療に入るタイミングはだいたい第二大臼歯が生えてくるタイミングになります。

また先ほど伝えたように、Ⅰ期治療の開始時期も少し遅くても大丈夫なため、矯正治療期間は短くなりやすいです。

ただし大人の矯正治療と比べるともちろん長いですが。。

Ⅱ期治療はおよそ2年から3年なので、中学3年生くらいまでのイメージになります。

 

《関連情報》子供の矯正治療について|疑問にお答えします


《関連情報》矯正治療の期間はどれくらい?

また、矯正治療の期間を短くする方法もあります。

自分で治療期間を短くする方法と、矯正歯科で選ぶタイプがあります。

少しでも早く終わりたい人は下記をご参考ください。


《関連情報》矯正を短期間に早く終わらせる方法とは!?

3.出っ歯の原因

出っ歯の原因を連想

出っ歯を治療する際に大事なことがあります。

 

それは何故出っ歯になったかです。

 

原因が骨にあるのか、それとも歯にあるのか確かめる必要があります。


出っ歯は骨格が原因の場合と、歯が原因の場合の2パターンあります。

 

順番に説明していきます。

 

骨格が原因の出っ歯

上の歯は上顎骨、下の歯は下顎骨という骨にそれぞれ埋まっています。


これらの前後的なバランスが崩れることによって、受け口や出っ歯になっていきます。

遺伝的な原因や成長時に起こる悪習癖によって、骨格的な問題が起きてきます。

骨格的な問題がある中でもいくつかのパターンがあります。

 

骨格が原因で出っ歯になる場合

上顎骨が前にあるが下顎骨は問題ない

 

上顎骨は問題ないが下顎骨が後ろにある

 

上顎骨が前にあり下顎骨が後ろにある

 

この3つがあるのですが、最後の上顎骨が前にあり、下顎が後ろにある、が重度の出っ歯になります。

 

出っ歯の図


歯が原因の出っ歯

上の歯が前に出ているが下の歯は問題ない

 

上の歯は問題ないが下の歯が後ろに下がっている

 

上の歯が前に出ており下の歯が後ろに下がっている

 

この3パターンになりますが、最後の「上の歯が前に出ており下の歯が後ろに下がっている」が重度になります。

 

実際には、骨格的な問題と歯性的な問題が混ざっていることが多いです。

 

この問題をどのように診断するかというと、セファロという横顔のレントゲンを撮影することによって、判断することが可能になります。

 

セファロレントゲン

簡単に説明すると、この横顔のレントゲンに基準となる点を打ちます。

 

基準点が3点決まると角度が測定できるため、この角度で判断していきます。

 

この角度の大きさが上顎骨、下顎骨の前後関係や上下の歯の軸の判断材料になるわけです。

 

実はこの角度が非常に大事で、これを考慮して矯正歯科治療をしないと後戻りの原因になってしまいます。


《関連情報》矯正治療後に後戻りした!どうすればいいの?

 

原因について詳しく知りたい方は下記の論文をご覧ください。

関連論文
上顎前突の顎顔面形態の研究

ではこの診断をどのように治療方針に活かすのでしょうか。

 

出っ歯の治療方法は大人と子供で大きく変わってきます。

 
順番に説明していきましょう

 

4.子供の治療方法

子供

骨格的な原因と歯が原因の出っ歯があります。

そのため、原因によって治療法が変わってきます。


《関連情報》子供の出っ歯の矯正治療について|疑問が全て解決します

ただし、どこで治療をしても同じというわけではありません。

ちゃんと原因を分かった上で治療方針を選択する必要があります。

正直、子供の矯正で失敗している人も見かけます。

選ぶ際は慎重に矯正歯科を選びましょう。


《関連情報》子供の矯正で失敗しないためには|後悔しない選び方

 

それでは、まずは骨格が原因の出っ歯から説明していきます。

 

骨格が原因の出っ歯


上顎骨が前にあるが下顎骨は問題ないケース
この場合は、上顎骨がこれ以上前にこないような装置を入れる必要があります。

 

ヘッドギアといって、上顎骨を後ろに引っ張る装置を使用することにより、上顎骨の成長を抑制できます。

 

この装置は取り外しができるタイプで、家にいるときに毎日使用することによって効果が出ます。

ヘッドギアの効果を詳しく知りたい方は下記をご参考ください。

関連論文
ヘッドギアとバイオネーター併用による上顎前突症の変化

 

ヘッドギアという矯正装置


          上図 ヘッドギア 

 

上顎骨は問題ないが下顎骨が後ろにあるケース
この場合は、下顎骨が後ろにあるので、成長を促進して前方にくるようにできるとベストです。

 

使用する装置はバイオネーターやBJAなどの装置を使用します。

バイオネーターの詳しい報告は下記を参考ください。

関連論文
小児歯科学会誌/バイオネーターを用いた1治験例

 

この装置も取り外しができるタイプで、毎日使用すると効果が出てきます。

また最近は、マウスピース矯正(インビザライン)でも下顎を前方に成長させるシステムがあります。


《関連情報》インビザラインで子供の矯正はできる??

バイオネーターという矯正装置

                          上図 バイオネーター

上顎骨が前にあり下顎骨が後ろにあるケース
この場合は、2つの装置を選択して使用したり、場合によっては同時に使用する場合もあります。

 

歯が原因の出っ歯

上の歯が前に出ているが下の歯は問題ないケース
この場合は、先ほど説明したヘッドギアという装置を使用します。

 

先ほどとの違いは後ろに引く力の量が変わってきます。

 

上顎骨の成長を抑制したい場合は強い力で引っ張り、歯を動かしたい場合は弱い力で引っ張るようにします。

 

ヘッドギアという装置

 

上の歯は問題ないが下の歯が後ろに下がっているケース
この場合は下の前歯を前に出していきます。

 

いろいろな方法がありますが、子供の場合はリンガルアーチという装置を使用する場合が多いです。

 下図 リンガルアーチ

リンガルアーチという矯正装置

 

この装置は、主線といって太い針金に細い針金がついており、この細い針金で歯を前に出していきます。

 

上の歯が前に出ており下の歯が後ろに下がっているケース
この場合は、ヘッドギアとリンガルアーチを組み合わせて矯正治療をすることになります。

 

子供の時期から矯正治療するメリットは、何と言っても抜歯する可能性が減少することになります。

 

また成長を利用するできるため、上顎骨と下顎骨のバランスが良くなり、口元や横顔が良好になります。

 

5.大人の治療方法

大人の治療方法を説明している男性

大人の場合は、成長は止まっているため成長を抑制、促進するような骨格的な改善は見込めません。

 

そのため歯を動かして改善していきます。

使用する装置はマウスピース矯正かワイヤー矯正になります。

《関連情報》マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いは?


《関連情報》インビザラインで出っ歯は治らない?

審美性を考えて裏側矯正とマウスピース矯正で迷われる方も多いです。

どちらも色々な特徴があります。

詳しくは、下記を参考にしてください。


《関連情報》マウスピース矯正と裏側矯正の違い|どっちを選べばいい?

 

部分矯正で対応できる可能性もありますが、多くは全体矯正をして治療した方が良いです。

やはり部分矯正だと、噛み合わせが悪くなる可能性があるため、注意が必要になります。

前歯だけきれいになって噛み合わせが悪くなってしまい、将来、歯がなくなるリスクが増えるのは、絶対に避けなくてはいけないと思います。


《関連情報》部分矯正と全体矯正の違いって知っていますか?

 

出っ歯を治すには上の前歯を後ろに移動させないといけません。

 

そのために隙間を作る必要がありますが

 

抜歯

 

奥歯を後ろに移動させる

 

歯と歯の間をわずかに削る

 

この3つがあります。

 
抜歯

抜歯を連想させる歯

重度の出っ歯の場合は抜歯が必要になります。

 

抜歯する場合は小臼歯を抜くことが多いですが、小臼歯の大きさは7mmくらいのため上の前歯を7mm以上下げる場合、抜歯は基本的には必要になります。

抜歯して出っ歯の治療を行なった症例を確認したい方は下記からご覧ください。

関連論文
松本歯学/上顎第一小臼歯のみを抜歯した上顎前突2症例

 

また抜歯しても治らない場合は手術をして治療する場合もあります。

《関連情報》 矯正治療の抜歯の必要性について

 

奥歯を後ろに移動させる
歯を後ろに移動させる場合は、平均して2〜3mm後ろに移動させることができます。

 

後ろに歯を移動させる時には、顎間ゴムといって患者さんに取り外しのゴムを、自分でつけてもらうようにします。


《関連情報》矯正歯科治療で使用するゴムの疑問は全て解決!


ただしこの場合、奥歯の後ろに骨がないと移動できないため、セファロやCTを撮影して確認する必要があります。

 

また親知らずがある場合、抜歯が必要になる場合が多いです。

 

奥歯を後ろに移動させるのは、インビザラインが非常に得意ですので、中等度の出っ歯はインビザライン を使用すると非抜歯で治ることが多いです。

 

《関連情報》 インビザライン は歯を抜かない非抜歯の治療が得意!


上の奥歯を後ろに移動させて治した症例を詳しく知りたい方は下記に論文からPDFをダウンロードして下さい。

関連論文
岐阜歯科学会雑誌/上顎前歯唇側傾斜を伴う上顎前突症例

歯と歯の間をわずかに削る
歯を削っている
出っ歯を治療する際にこれのみで治療することは少ないです。

 

歯の間を削る場合、0.5mmまでは凍みたり虫歯になる可能性は非常に少ないため、問題ないと思います。

 

抜歯や奥歯を後ろに移動して治療する際に併用することが多いです。


《関連情報》矯正治療で歯を削るストリッピングのメリットデメリットは?

 

どの方法で治療するにしても、セファロ撮影での分析結果は非常に大事です。

 

この分析によって、前歯の位置や角度を決めていきます。

 

前歯の位置を決めてから、奥歯の位置を固定、後ろに移動、もしくは前に移動させるかを決めていきます。

前歯の位置によって口元が変わり、Eラインに影響が出ますので非常に大事です。


《関連情報》矯正でEラインや唇が変化するって本当?

 

奥歯の位置によって口の中に入れる装置が変わってきます。

 

治療するときは、歯の軸を適正な角度に位置付けるような治療方針を組み込みます。

 
骨格的に顎が開いている症例(顔が長い)には、インプラントアンカーというものを使用します。

それによって少しでも顎が閉じる(顔を短くする)方向になるような治療メカニクスを入れていきます。


また、このインプラントアンカーは奥歯が前に移動しないように固定する際にも、重要な役割を持ちます。

 

《関連情報》 なぜインプラント矯正は常識をくつがえす治療法なのか?

6.出っ歯の矯正する値段、費用は?

出っ歯の値段をイメージするお金

出っ歯を治す費用については、自費診療のため矯正歯科ごとにそれぞれ費用が違ってきます。。

ワイヤ矯正、マウスピース矯正の選択によっても、費用が変わる可能性が高いです。

ただし、相場というものはありますので、インビザラインにかかる費用については下記をご参考ください。


《関連情報》インビザラインの費用はどれくらい?|正しい値段を知りましょう


あまり安すぎる歯科は、色々と問題がある場合もありますので注意しましょう。

また重度の場合は保険治療で行う場合もあります。

ただし、この時は外科手術を併用する場合になります。


《関連情報》矯正治療は保険適用になるの?


また、医療費控除はできますので、矯正治療をする際は、必ず確定申告時に行うようにしましょう。

しっかり申告すれば、還付される金額は所得税率によって変わりますが、戻ってきます。

忘れてしまっても遡ってできますのでご安心ください。


《関連情報》矯正治療は医療費控除をしないと損します!


また少しでも費用を安くしたい人は多いと思います。

その場合はこちらを参考にしてください。

いくつか方法はあります。

6.大人の症例


今回は抜歯して治療を行った症例をお見せします。

出っ歯の側面観
出っ歯の正面観

 

正面の写真から見ています。
前歯が出ているのがおわかりだと思います。

 
 

上顎の咬合面観
下顎の咬合面観

 

上から見た状態ですが上下ともにガタガタがあります。
 

治療後の側方
治療後の正面観
治療後の左の側方面観

 

上顎の小臼歯を左右合わせて2本抜歯を行い、矯正治療を行いました。

 

正面から見た状態ですが出っ歯が治り、キレイに噛んでいます。

 

上から見た図ですが、ガタガタも治っています。

 

この方はインプラント矯正をしましたので、外した日の写真のため、穴が空いていますがすぐ治癒していきます。

 

治療後の上顎
治療後の下顎

費用 83万円(税別)

 
    

治療期間は2年になります。

まとめ

出っ歯の歯列矯正は、子供の場合は原因によって治療方法が異なります。

そのため、しっかり診断を行い、原因に基づいた治療をする必要が出てきます。

子供の時に治療する最大のメリットは、抜歯する可能性が減る事です。

これは大きなメリットだと思います。

大人の出っ歯の治療は、出っ歯の度合いが大きいと抜歯する可能性が高くなってしまうので、早期に治療するメリットは大きいです。

出っ歯の人は見た目を気にする人が多いですが、機能的な改善も非常に大事です。

どの様な効果があるか知ると、矯正のモチベーションも上がるでしょう。


《関連情報》矯正治療の効果について|見た目だけではなく様々な効果があります!

 

最後までご覧頂きありがとうございました。

 

名古屋で矯正治療のお悩みがあれば無料矯正相談も受け付けています。




日本矯正歯科学会認定医 歯学博士


増田 丈浩