矯正専門医ブログ

子供の矯正治療について|疑問にお答えします

:2021年1月11日 :2020年3月10日

日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
増田 丈浩

口の中を見ている子供

子供の矯正治療をお考えの方

子供のために矯正治療を考えている人は多いです。

矯正治療は最大の予防歯科と考えているため、大人になってからするのであれば早期にした方が効果は高いです。

『いつからした方がいいの?』
            

『抜歯はなるべくしたくない』

など色々あると思います。

順番に良くある質問をお答えしようと思います。

目次

1.子供の矯正の特徴とメリット

子供の矯正のメリットをイメージしている

子供の頃から矯正治療をするとどんなメリットがあるのでしょうか?

順番にお伝えします。


骨格の改善ができる

子供の矯正治療は成長期を利用できます。

それによって骨格の改善ができることが最大のメリットになります。

骨格が改善できると顔貌もキレイになります。

成長期の間に顔のバランスを整えておくことが非常に大事になります。


《関連情報》矯正でEラインや唇が変化するって本当?


出っ歯の場合

出っ歯の場合を見てみましょう。

出っ歯の口の中は下図のようになっています。

出っ歯の噛み合わせ
出っ歯の成長期を利用した矯正治療は、上顎骨の成長を抑えるか下顎骨の成長を促進させていきます。

この成長期を利用した治療がうまくいくと出っ歯が治り、抜歯をしなくて治る可能性が高まります。


《関連情報》子供の出っ歯の矯正治療について|疑問が全て解決します

受け口の場合

受け口の場合はどうでしょうか。

受け口の口の中は、下図のようになっています。

受け口のかみ合わせ

受け口の成長期を利用した矯正治療は、上顎骨の成長を促進させるか、下顎骨の成長を抑制させていきます。

受け口は放置しておくと、どんどん下顎が成長していきます。

早期に治療することによって、外科手術の可能性が低下します。

歯列の幅を広げることができる

幅を広げている矯正装置

子供の矯正治療は成長期の利用ができます。

幅を広げることができれば、隙間が増えていきます。

そうすると、歯のガタガタを並べることが可能になり、抜歯の可能性を減らすことができます。

ただし、考えもなく広げるのは絶対ダメです。

適切な診断があればいいのですが、拡大には限界があるので無闇に広げようとする先生には注意してください。


《関連情報》子供の矯正で失敗しないためには|後悔しない選び方

 

呼吸、鼻炎の改善

軌道の広さを表しているレントゲン

上図の黄色のところが気道になります。

症例にもよりますが、この気道が狭い子供もいます。

顎が小さかったり、下顎の成長が悪く引っ込んだ状態だと、あまり良くありません。

何故だか分かりますか?

顎が狭かったり引っ込んでいると、舌の居場所がありません。

そうすると、舌根沈下といって気道の方に、舌が追いやられてしまいます。

それにより、気道の体積が狭くなり、鼻の通りも悪くなります。

また気道が狭いと、呼吸がしにくくなります。

それによって首全体が少し前に傾き、姿勢にも影響が出ます。

レントゲンで見ると、ストレートネックといって、本来ある湾曲がなくなってしまうのです。

そのため、子供の頃に矯正で顎を広げることによって、これらの改善ができる可能性があります。

また、下顎の成長が悪く引っ込んでいる場合は、前方に成長を促すことによって気道が広くなります。

これにより、睡眠時無呼吸症候群の改善や、鼻呼吸の助けになることもあるのです。

発音の改善

空気が漏れてしまいそうなかみ合わせ

前歯が噛んでいないと、話す時に空気が漏れてしまいます。

そのせいで、話しにくかったり滑舌が悪くなります。

サ行が話しにくいことが多いです。

矯正治療をすることによって、適切な前歯の噛み合わせが獲得できると、発音の改善も期待できます。

2.子供の矯正を始める時期、タイミング

子供

治療を開始する時期は、症例によって変わってきます。

特に受け口と出っ歯では時期が異なります。

受け口の場合

受け口の噛み合わせ

受け口の場合は、早めの矯正治療が望まれます。

症例にもよりますが、重度の場合は4〜5歳から治療を受けた方がいい場合があります。

何故かというと受け口の場合、上顎の成長が悪いことが多いです。

上顎が前方に成長しようとしても、下の前歯が前にあるため、ぶつかってしまい、成長が抑制されてしまいます。

そうすると、どんどん受け口の度合いがひどくなってしまいます。

また上顎の成長のピークは5〜6歳といわれており、時期が早いです。

そのため、そのピークを利用して、上顎骨を前方に成長させていくのです。

出っ歯、ガタガタの場合

出っ歯の噛み合わせ

出っ歯、ガタガタの場合は受け口より開始は遅くて問題ありません。

開始する時期は8〜10歳ぐらいから開始しても、大丈夫な場合が多いです。

この理由はどうしてでしょうか?

先ほど、上顎骨の成長のピークは5〜6歳頃とお伝えしましたが、下顎の成長のピークは小学校高学年の時期になります。

身長が伸びる時期に下、顎も成長していきます。

そのため、出っ歯の場合は下顎骨を前に成長させる場合が多いので、その時期に合わせて治療を開始します。

ただし、歯並びというのは出っ歯だけでなく、様々な悪い噛み合わせが合わさっている場合も多いので、少し早めから確認してもらいましょう。

ガタガタの場合は、拡大には限度があるため早期から拡大しても、その後することがなくなってしまいます。

ただし、ガタガタでも出っ歯や受け口のガタガタもあるので注意しましょう。


《関連情報》子供の矯正は何歳から?小児矯正のタイミングをまとめました

 

3.子供の治療の流れ


子供の矯正の流れ

子供の治療の流れを順番に説明していきます。


《関連情報》矯正治療の期間はどれくらい?


初診カウンセリング

 

主訴をお聞きし、お口の中を拝見させて頂き、写真を撮ります。

 

その後、治療期間、治療方法、矯正装置、費用について大まかに説明していきます。

 

精密検査

パノラマレントゲン

 

セファロレントゲン(正面、側面)

 

手根骨の撮影(成長の確認)

 

模型

 

顎関節の状態の確認や運動

 

お顔の写真

を行ない、精密検査の資料をお取りします。

 

診断

精密検査の資料を分析して、その結果をお話しします。

早期に矯正治療をすることによるメリット、デメリット

 

矯正の治療方針

 

治療期間

 

費用や支払い方法

 

を説明していきます。

1期治療(子供の時の矯正治療)

 

子供の矯正治療の最大のメリットとして、骨格的な治療が可能ということになります。

 

早期に矯正治療をすることにより顔貌の改善、また抜歯の可能性を減らすことができます。

 

子供の矯正治療は基本的に1〜2ヶ月に1回となります。

 

期間は子供の矯正治療は永久歯が生え変わるまでとなります。

再診断

子供の矯正治療が終わるともう一度、資料採得し、再診断を行います。

抜歯、非抜歯もここで最終判断していきます。

 

2期治療(大人の時の矯正治療)

ブラケットやマウスピース型矯正装置(インビザライン)などの矯正装置を使用し、緻密に噛み合わせを整えていきます。

 

《関連情報》マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いは?

ここでは審美的な目的だけでなく、機能的な噛み合わせも作っていきます。

 

顎の状態をしっかり診断し、正しい顎関節の位置に機能的な噛み合わせを作っていきます。


保定

矯正治療が終わると保定に入ります。

 

後戻りをしないように、保定装置を使用していきます。

 

およそ2年を目処に保定装置を使用していきます。

 

《関連情報》矯正治療後の保定装置(リテーナー)の悩みが全てがわかる!

 

4.装置の種類

子供の時に使用する主な装置は3つに分類されます。

詳しくは下記を参考にしてください。

《関連情報》子供の矯正|装置の種類は大きく分けて3種類あります!

 

取り外しのできる装置

取り外しのできる矯正装置

子供自身が取り外しします。

幅を広げる装置や、成長を促す装置など様々あります。

使用しないと、効果が出ないので注意しましょう。

取り外しができない装置

取り外しのできない装置

固定式のタイプになります。

子供が外そうとしても、外すことはできません。

そのため効果は確実に出ます。

顎外装置

額外装置

口の中には固定式の装置が入るのですが、顔にも装置がついてきます。

顔の外の装置は取り外しが可能になるので、ご安心ください。

こちらも子供が使用しないと、効果は出ません。

この顎外装置は、成長を促進したり抑制したりする装置になります。

マウスピース矯正(インビザラインファースト)

インビザラインファーストを使用している子供
最近は、子供の症例でもマウスピース(インビザライン)をはめて治療する症例も増えています。

こちらはもちろん、取り外しが可能になります。

マウスピース矯正も、子供が装置を使用しないと効果が出ません。


《関連情報》インビザラインで子供の矯正はできる??

5.子供の矯正治療は痛い?

痛みを訴えている女性

子供の矯正治療は、大人の矯正治療より一般的に痛みは少ないといわれています。

ですが歯を動かすことによって、多少の痛みや違和感は出てしまいます。

ただ、子供は適応能力が高いので、すぐ慣れるのであまり心配は入りません。

あとは装置が入るため装置が唇、舌、頬に当たって口内炎ができたりすれて痛いことはあります。

その際は、透明なワックスを出っ張っているところに置くと、痛みは和らぎますので心配いりません。

それでも痛いようであれば、矯正歯科に連絡しましょう。


《関連情報》歯列矯正って痛いの?痛みは対処できれば怖くない!

 

6.デメリット

デメリットを表している

子供の矯正歯科治療に、どのようなデメリットがあるのでしょうか?

一番は治療が長期になることです。

受け口であれば早い人で4、5歳から開始になります。

そうすると、10年くらいかかる可能性もあります。

また治療が長期になると、毎月の矯正処置料がかかる医院だと費用も高くなります。

装置が長期に入るので、虫歯のリスクも増える可能性があります。


虫歯の治すタイミングや矯正中の予防方法などは下記をご参考ください。


《関連情報》矯正と虫歯の関係|いつ虫歯を治すかなど疑問を全てまとめました!


ただし、毎月通うことになるのでフッ素を塗布したり、虫歯のチェック、歯ブラシ指導も行います。

それによって虫歯になりにくくもなるので、一概にデメリットとは呼べないかもしれません。

また、矯正治療自体には様々なリスクがありますので、気になる人は下記をご覧ください。


《関連情報》矯正治療のリスク、デメリット

 

7.子供の矯正治療は保険適用?

疑問を浮かべている女性

『子供の矯正治療は保険適用ですか』とたまに質問されます。

残念ながら基本的には自費治療となります。

何故なら、厚生労働省から矯正治療は病気を治す行為ではない、とみなされているからです。

ただし『基本的には』といったのは保険適用の場合もあるからです。

赤ちゃんの頃からなんらかの症候群があったり前歯が3本以上萌出してこない、歯が6本以上欠損している場合は保険適用になります。

 

《関連情報》矯正治療は保険適用になるの?

 

8.費用

計算機で費用を計算している

子供の矯正治療の費用は、矯正歯科にもよりますが、大人の治療より安くなることが多いです。

大体目安としては、大人の矯正が仮に100万円としたら、子供の矯正は50万円の半分ほどのイメージです。

ただし、子供の矯正は1期治療と2期治療に分かれます。

そのため、1期治療が50万円で2期治療が50万円となり、トータルの費用は大人の矯正治療とさほど変わらないようになっているところが多いです。

《関連情報》子供の矯正の費用はいくら?|小児矯正でかかる費用をまとめました!


また忘れていけないのは矯正処置料です。

こちらは受診のたびに費用がかかってきます。

そのため、子供の矯正は長期になりやすいので、この矯正処置料がバカになりません。

矯正処置料の目安は、歯科医院によって大幅に変わります。

3千円から1万円の間には入ってきますので確認しましょう。

仮に5千円として、毎月来院を6年間すると30万円になってしまいます。

ただし、矯正処置料が費用に含まれている矯正歯科もありますので、長期になる場合はお得になりやすいです。


《関連情報》矯正の費用は3種類の支払い方法があるのをご存知ですか?

 

9.医療費控除は可能?

医療費控除が可能かを連想させているお金と指の画像

子供の矯正でも医療費控除は可能です。

年間10万円以上の医療費に対して控除を受けれます。

もう少し詳しく説明します。

その年にかかった医療費ー10万円=医療費控除額

所得税や住民税で還付されますが、還付される金額は所得によって変わってきます。

還付金額=医療費控除額×所得税率

になります。

また、世帯主が申請することになると思いますが、家族でかかった医療費に対して控除が受けれますので、家族の医療費を合算することができます。

医科や歯科でかかった医療費の領収書は、捨てずに取っておきましょう。


《関連情報》矯正治療は医療費控除をしないと損します!

 

まとめ

子供の矯正治療で最大のメリットは骨格の改善ができることです。

これによって横顔も綺麗になりますし、出っ歯であれば抜歯、受け口であれば手術して治療する可能性が軽減します。

ただし、治療が長期化しやすいので矯正処置料が上乗せされる場合は、合計金額が高くなるため注意しましょう。

また始めるタイミングも症例によって異なります。

出っ歯は少し遅くても大丈夫ですが、受け口の場合は早めの受診をお勧めします。


《関連情報》子供の矯正と大人の矯正の違いは何?|疑問をまとめました

 

最後までご覧頂きありがとうございました。

 

名古屋で矯正治療のお悩みがあれば無料矯正相談も受け付けています。




日本矯正歯科学会認定医 歯学博士


増田 丈浩