日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
増田 丈浩
キレイラインの矯正治療ってどうなの?
最近このような質問をされることが増えてきました。
やはり矯正は一大事なので慎重になると思います。
『ちゃんと治るの?』
『安いし気になっている』
など様々なお話を聞きます。
どのような症例なら対応できるのでしょうか?
目次
1.噛み合わせ
まず症例のお話をする前に、知って頂きたいことがあります。
それは噛み合わせについてです。
少し難しい話なので、興味なければ飛ばしてください。
ほとんどの症例で、キレイラインでは良好な噛み合わせを作ることはできません。
キレイライン は部分矯正と考えるべきだと思います。
《関連情報》部分矯正と全体矯正の違いって知っていますか?
部分矯正は全体矯正と違って達成できる効果は変わってきます。
噛み合わせが良くなると、様々な効果が得られます。
知っておくと矯正のモチベーションも上がるでしょう。
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なぜキレイラインは、良好な噛み合わせが作れないのでしょうか?
それはキレイラインの歯の移動は、上の前歯6本、下の前歯6本の計12本に限定しているからです。
良好な奥歯の噛み合わせとはどんなものでしょうか?
上図のように上の第一大臼歯の手前の山が、下の第一大臼歯の溝に噛み込む状態が、正しい奥歯の噛み合わせです。
この山と溝の関係がずれると、出っ歯や受け口になります。
そのため、最初から奥歯の噛み合わせが良好な症例であれば、適しているでしょう。
もしくは100点を狙わず、今より少しでも良くなればいいという方であれば、良いかもしれません。
また歯ぎしりした時の噛み合わせも非常に大事です。
どういった噛み合わせが大事かというと歯ぎしりした時に奥歯が当たらないということです。
下の図は噛んだ状態です。
この状態から下顎を横にずらすと、犬歯で歯ぎしりできるのがベストです。
下の図で見ると犬歯だけ当たって、奥歯が空いているのがわかると思います。
このような噛み合わせにならないにしても、せめて小臼歯までが当たって大臼歯が当たらないような噛み合わせができるような症例であれば、まだいいと思います。
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そのため説明を受けてシュミレーションを見せてもらう時に、上下の八重歯と小臼歯の間に隙間がないか確認すると良いでしょう。
ここに隙間があると、歯ぎしりしても当たらないので奥歯が当たってしまいます。
また拡大床を使用する場合も注意が必要です。
あまり大きく広げることはできません。
広げすぎてしまうと骨から飛び出してしまい、歯茎が下がったり、最悪歯の神経が死んでしまいます。
また拡大床を使用するなら基本は上下一緒に広げます。
どちらか一方だけ広げると上下の歯が噛まなくなり、歯ぎしりした際に奥歯が当たらない噛み合わせもより作れなくなります。
もし先生が上顎のみ、下顎のみ拡大床を入れると説明があった場合は、しっかり理由を聞くようにしましょう。
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2.すきっ歯の場合
すきっ歯は比較的治しやすい部類に入ります。
そのためキレイラインでも良くなる可能性が高いです。
また奥歯の噛み合わせが、もともと良い噛み合わせであるとベストです。
ただし歯の隙間を埋める際に、キレイラインは傾斜移動で治しますので、歯の軸が少し傾いて隙間が閉じる可能性はあります。
インビザラインであればアタッチメントというものをつけて移動するため、この傾斜移動は起きにくいです。
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2.出っ歯の場合
出っ歯の症例はどのような症例が良いかというと、こちらも奥歯の噛み合わせが良い症例がベストです。
『奥歯は正しい噛み合わせで上の前歯が出てしまっている』であれば、奥歯を矯正する必要がないので、ある程度キレイに治ると思います。
ただし治す際は上の歯を少し削って隙間を作る作業が必要になります。
上下顎に拡大床を入れても出っ歯の度合いは変わりません。
どうしてでしょうか?
拡大してそのスペースで上の前歯を中に入れるとします。
下も拡大してるのでスペースができますから、下の前歯も中に入るからです。
ただし全く意味がないかというとそうではないです。
下の歯にガタガタがある場合やなるべく上下の前歯を中に入れたい場合は、上下拡大することがあります。
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奥歯の噛み合わせが正しくない場合はどうでしょうか?
上図のように奥歯の噛み合わせを見ると、上顎第一大臼歯の手前の山と下顎第一大臼歯の溝が噛み込んでいません。
通常は青い線が一致する位置にないといけないため、奥歯の噛み合わせがずれておりその分、上顎前歯も前にきます。
このような状態の時は100点の治療は無理になります。
あなたが少しでも上の前歯を中に入れたい、少しでも良くなりたい場合であれば治療しても良いかもしれません。
この場合も上顎の歯を少し削って中に入れていきます。
インビザラインの場合は、出っ歯の治療がより制度の高い治療が可能になります。
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3.受け口の場合
受け口の場合も同じです。
まずは奥歯の噛み合わせが良いのがベストです。
奥歯が問題なければ、上顎前歯を前に出して、下顎は少し歯を削り、下の前歯を中に入れるような矯正治療します。
出っ歯と同じで上下顎に拡大床を入れても受け口が治ることはないです。
同じ理屈で下顎を広げて前歯を中に入れますが、上顎も広がるため上の前歯も中に入るからです。
奥歯の噛み合わせが良くない時は、度合いにもよりますが、キレイラインでしない方が良いでしょう。
どういうことか説明します。
上図のように奥歯の噛み合わせを見ると、上顎第一大臼歯の手前の山と下顎第一大臼歯の溝が噛み込んでいません。
通常は青い線が一致する位置にないといけないため、奥歯の噛み合わせがずれておりその分、下顎前歯も前にきます。
この状態で下の前歯を中に入れようとすると、下の前歯を噛み合わせが悪化する可能性があります。
なぜかわかりますか?
下の歯を入れても完全には入りきらないので、上の前歯とぶつかってしまいます。
そうすると前歯がぶつかるため、奥歯が噛まなくなったり噛み合わせが悪くなるので、しない方が良いのです。
4.上下の歯がガタガタの場合
こちらも奥歯の噛み合わせが大事になります。
奥歯の噛み合わせが良好であれば、前歯のみのガタガタはキレイラインで矯正治療するのは良い場合が多いと思います。
矯正治療する際は上下を拡大したり歯を少し削ったり、前歯を前に出して、隙間を作って治療します。
前歯を前に出すと口元が突出し、Eラインが悪くなります。
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ただしガタガタの度合いが大きすぎる時は、完全にはキレイになりません。
その際は治りきらない事をわかって、治療する必要がありますのでよく先生と相談しましょう。
また奥歯の噛み合わせがよくない場合はどうなるでしょうか?
奥歯の噛み合わせが、出っ歯の場合は出っ歯が残り、受け口の場合は受け口が残るようになります。
5.抜歯の場合
抜歯するということはかなりのガタガタ、もしくは出っ歯ということになります。
キレイラインは歯を平行に移動させることはできません。
そのため傾斜しながら歯が動くのですが、矯正治療の基本は倒れずに歯を平行に移動させることになります。
そうすると噛み合わせが悪くなる可能性が高くなるため、個人的には抜歯して矯正治療するのはオススメしません。
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まとめ
いかがでしたか?
キレイラインは安いので簡単に始めやすいです。
ただ、する際はメリット、デメリットを考えてすることが非常に大事です。
メリットはもちろん安いことです。
デメリットは噛み合わせが今より悪くなったり、100点の治療ができない可能性があるということです。
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そのため、どこまであなたが矯正で治したいか、よく矯正歯科の先生と相談する必要があります。
始めてから『こんなはずでは…』とならないように自分がどの症例に入り、どこまで治るのかしっかり確認しましょう。
治療のゴールをどこに求めるかにもよりますが、よりキレイになりたいという方はインビザラインも検討しても良いと思います。
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最後までご覧頂きありがとうございました。