日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
増田 丈浩
子供の出っ歯は矯正治療したほうが良いの?
子供が出っ歯になる方も多いと思います。
出っ歯だと見た目も良くないですし、転んだ時に前歯を打ってしまう可能性も高くなってしまいます。
「出っ歯って原因はなんなの?」
「子供の出っ歯はどうやって治すの?」
色々なご質問をいただきます。
今回は子供の出っ歯の疑問について順番に説明していきます。
目次
1.子供の出っ歯の原因は?
子供の出っ歯の原因は何があるのでしょうか?
いくつかありますが、まずは自分の行いによって、なってしまうものから順番に説明していきます。
指しゃぶり
指しゃぶりで多いのが、親指の腹を上顎前歯の裏側に押し付けてすることが多いです。
また下の前歯も親指の背に当たって、後ろに押されます。
この押し付ける行為によって、上の前歯が前に押され、下の前歯が後ろに移動することによって出っ歯になってしまいます。
また、この指しゃぶりによって前歯が噛まない開咬という不正咬合にもなる場合があります。
さらには、指を強く吸うことにより、歯列が圧迫されて歯並びの横幅が狭窄することもあるので注意が必要です。
口呼吸
口呼吸をする人は、舌の位置が悪い場合が多いです。
通常、正しい舌の位置は上顎の前歯の裏くらいに舌の尖端があります。
正確には前歯には舌は付きません。
ですが、口呼吸の人は舌が前歯の裏側につかないため、筋肉のバランスが崩れやすくなります。
口が常に開いていると、唇の力が弱いため、前歯も前に出やすくなってしまいます。
舌突出癖
先ほど、舌の位置の説明をしました。
通常、唾を飲み込むなど、嚥下する時は前歯の裏側に舌の先端をつけながら嚥下します。
その時、舌は前歯には接していないのですが、悪い癖があると嚥下する際に前歯を押してしまいます。
舌が前歯を押すことによって出っ歯の原因となってきます。
口唇癖
下唇を噛む癖があるとこれも出っ歯の原因になります。
この理由としては、下唇を噛むことによって、下唇が上顎前歯を前に押すために出っ歯になってしまいます。
また下顎前歯も内側に倒れ込んできてしまいます。
2.遺伝が原因で子供が出っ歯になる?
先ほどは後天的な要素をまとめました。
今度は先天的な要因になります。
結論からいうと、遺伝である程度、骨格は形成されます。
そのため、顔の形や骨の大きさ、舌の位置などは親から遺伝します。
しかし、そのまま引き継がれるわけではなく、先ほどお伝えした後天的要素は非常に影響を受けます。
なので、「親が出っ歯だから子供が出っ歯に必ずなる」というわけではありません。
3.子供の出っ歯はいつから治療するのか?
子供が出っ歯の場合の治療開始のタイミングについて説明します。
子供の矯正は例外はありますが、永久歯が萌出してからが、一つの開始のタイミングになります。
ただし受け口や出っ歯、ガタガタによって開始時期が変わってきます。
出っ歯の場合、8歳〜10歳くらいが一つの目安になるでしょう。
《関連情報》子供の矯正は何歳から?小児矯正のタイミングをまとめました
この理由として、出っ歯は下顎を前に成長させる装置を入れることが多いのですが、下顎の成長は12歳くらいまであります。
そのため、少し開始時期が遅くても間に合うことが多いです。
ただし、出っ歯だけでなく、様々な不正咬合になっている可能性はありますので、早めに受診しておくことは悪いことではありません。
4.子供の出っ歯の治し方
子供が出っ歯になる原因として4種類考えられます。
1.上顎が前に過成長している
2.下顎の成長が悪い
3.上顎前歯が前に出ている
4.下顎前歯が後ろに下がっている
があります。
また、これらが組み合わさっていることも多いです。
ここの診断ができていないと、適切な治療方針が選択ができません。
適切な治療方針が選択されないと治りませんので注意が必要です。
《関連情報》子供の矯正で失敗しないためには|後悔しない選び方
では話を戻しますね。
1.2.は骨格的な問題で3.4は歯の位置の問題になります。
この状態によって、使用する装置が違ってきます。
《関連情報》子供の矯正|小児で使用する装置は3種類あります!
多いのが2.の「下顎の成長が悪い」になります。
4.はほとんどありません。
順番に説明していきます。
上顎が前に過成長している(ヘッドギア)
上顎が前に過成長している場合、上顎の成長を抑えることをしていきます。
顎外固定装置といって、頭に固定源を求めて上顎を後ろに引っ張ります。
場合によっては下顎を前に成長させて相対的にバランスを取る場合もあります。
下顎の成長が悪い(バイオネーター)
下顎の成長が悪い場合は、下顎を前に出して成長を促進させます。
バイオネーターという装置を使用して、上顎と下顎のバランスを良くし、出っ歯を治していきます。
この出っ歯の状態が一番多いです。
上顎前歯が前に出ている(ヘッドギア)
先ほど上顎の成長を抑制する装置と同じ装置を使用します。
このヘッドギアで上顎の奥歯を後ろに移動させます。
奥歯が後ろに移動できれば隙間ができますのでその隙間を利用して前歯を中に入れてきます。
先ほどと装置が同じですがかける力が変わると実は効果が変わってきます。
骨全体を動かす場合には強い力でも、歯を動かす場合は弱い力になってきます。
下顎前歯が後ろに下がっている
下顎前歯が後ろに倒れている場合はほとんどありませんが、この様な場合はリンガルアーチを使います。
リンガルアーチには細い弾線がついており、この弾線で下顎前歯を前に出します。
5.子供の出っ歯とマウスピース矯正
子供の出っ歯で、マウスピース矯正を使用して治すこともできます。
インビザラインファーストというマウスピース矯正を使用します。
このインビザライン ファーストで、下顎を前方に成長させて治療していきます。
それ以外にも、歯のガタガタをとったり、拡大もできます。
先ほどのバイオネーターという装置と機序は似ていますね。
注意点として、期間が1年半と限定されているので、始めるタイミングは大事になってくるでしょう。
《関連情報》インビザラインというマウスピースで子供の歯並びは治せる??
6.子供の時はせずに大人から矯正する場合
では子供の時に治療をせずに、大人になってから治療する場合はどうなるでしょうか?
この場合、大人から始めると出っ歯を治すために隙間が必要なので抜歯になることが多いです。
子供の時から始めると成長を利用した治療ができるので、抜歯になる可能性が減ります。
また、成長を利用すると横顔も綺麗になりますので、大人の時から始めるより仕上がりは綺麗になります。
《関連情報》子供の矯正と大人の矯正の違いは何?|疑問をまとめました
7.子供の出っ歯の予防は?自然に治る?
子供が出っ歯にならないことも非常に大事です。
では、どの様にしたら出っ歯になりにくくなるでしょうか?
最初にお話しした様に、出っ歯の原因は後天的と先天的の原因があります。
先天的な要因、すなわち遺伝に関してはどうしようもありません。
ですので、後天的な要因をできる限り減らすことが出っ歯の予防につながります。
先ほどお伝えした、指しゃぶり、口呼吸、舌突出癖、口唇癖になります。
子供がこの様な悪い癖をしていたら、治す様にしましょう。
それでは悪い癖を治せば、出っ歯は自然に治るのでしょうか?
この様な悪い癖が原因で、出っ歯になったのであれば、悪い癖を治すことによってある程度、自然に治ってきます。
ただし、悪い癖が原因で、骨にも影響が出ている場合は全て治りきらないため、その際は矯正歯科に受診しましょう。
8.出っ歯を写真やイラストで見るとどんな感じ?
それでは出っ歯を写真やイラストで見ると、どんな感じになるでしょうか?
イラストだと上図の様に正面から見ると、あまりわかりにくいこともあります。
横のイラストを示します。
イラストで見るとわかりやすいですが、定義として、下の歯より上の歯が前に4mm以上あると出っ歯になってきます。
これを一つの基準とすると良いでしょう。
次に口の中の写真で見てみましょう。
正面からだとあまりわかりにくいですが、この患者さんは出っ歯になります。
出っ歯でも噛み合わせが深い出っ歯と、噛み合わせが浅い出っ歯があります。
この写真は、下の歯が見えていない部分もあり、噛み合わせが深い出っ歯になります。
横から見ると、前歯が飛び出しているのがわかると思います。
イラストや写真で見ても、同じように見えるのがわかるでしょう。
前歯が飛び出していると、口元も出てきます。
治療することによって、口元も改善されるので横顔も綺麗になるでしょう。
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9.子供の出っ歯の矯正でかかる費用
子供の矯正の費用はいくらかかるか、皆さん気になるところだと思います。
子供の矯正は1期治療と2期治療に分かれており、それぞれ費用を支払う様になります。
おおよそ1期治療が30万〜50万、2期治療が使用する装置にもよりますが、30万〜50万のイメージになります。
また、忘れていけないのが、矯正処置料です。
この矯正処置料は来院ごとに装置の調整代としてかかる費用になります。
この矯正処置料の相場が3000〜5000円になります。
例えば矯正処置料が5000円で、1期治療だけで、4年通うとすると
5000円×12ヶ月×4年=24万円
となり、かなり高額の費用が上乗せされてしまいます。
そのため、当院もそうですが、はじめに支払う料金に、この矯正処置料が含まれている医院もあります。
その合計金額で判断する様にしましょう。
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まとめ
子供が出っ歯になる原因として先天的な要因と後天的な要因があります。
先天的は遺伝であり、後天的は指しゃぶり、口呼吸、舌突出癖など悪習癖が原因となります。
後天的な要因を抑えることができれば、予防にもなり、ある程度治ってくることも稀にあります。
治療法として、原因に基づいた治療をすることが非常に大事になります。
子供の矯正治療には、骨格的なアポローチや歯に対してのアポローチがあります。
子供の矯正治療の最大のメリットは、骨格的なアポローチができることになります。
親としては、子供のために矯正治療をしてあげたいと考える人も多いと思いますので参考になれば嬉しいです。
《関連情報》子供の矯正治療について|疑問にお答えします
最後までご覧頂きありがとうございました。