日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
増田 丈浩
子供の矯正の装置の種類
子供の矯正をする際に、どのような装置を使うか気になるところです。
「痛い装置は子供につけたくない」
「どんなものを入れるか気になる」
など色々な話を聞きます。
子供の矯正を始める前にイメージができると始めやすいと思います。
今回は装置の話のため、子供の矯正の詳しいお話は下記を参考にしてください。
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では、使用する装置を順番に説明して行きます。
目次
1.子供の矯正で使用する装置の種類
子供の矯正で使用する装置は、何があるでしょうか?
・可撤式矯正装置
・固定式矯正装置
・顎外固定装置
細かく分けると色々ありますが、大きく分けて3種類あります。
関連サイト
厚生労働省/不正咬合の治療法の概要
この装置を使って、大人ではできない矯正治療を行なっていきます。
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簡単に、この3種類を説明します。
可撤式矯正装置
この可撤式矯正装置というのは取り外しができる矯正装置になります。
子供が自分で取れ外すことができます。
そのため、使用しないと効果が出ません。
固定式矯正装置
固定式矯正装置は自分で取り外しできません。
口の中に装置がセメントで固定されていますので子供が自分で取れません。
そのため、絶えず装置がついていますので効果は必ず出ます。
ただし、痛みがあった場合、装置の取り外しができないため、矯正歯科に行って調整してもらう必要があります。
顎外固定装置
顎外固定装置というのは、通常の装置は口の中に固定源を求めるのですが、顔の外に固定源を求める装置です。
具体的には、顎やおでこに固定を求めて矯正力をかけていきます。
顎外固定装置は口の中に装置が入る場合もありますが、入らない場合もあります。
このように主に3種類の装置が入ることが多いです。
子供の矯正は期間が長く、様々な装置が入ってきます。
始めるタイミングも大事になり、早く始めてしまうと期間がより長くなってしまうため適切なタイミングで治療を始めましょう。
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2.子供が使用する可撤式矯正装置
可撤式矯正装置とは、先ほど取り外しができる矯正装置と説明しました。
色々ありますので順にお見せします。
拡大床
この装置は拡大床といい、歯の幅を広げます。
隙間が足らない場合、この装置を使用し、幅を広げることによって歯の萌出スペースを確保します。
ただし、どこまでも広がるわけではないので広げすぎは禁物です。
バイオネーター
この装置はバイオネーターといって下顎を前方に成長させます。
そのため、出っ歯の人に使用するものです。
ただし、出っ歯であれば必ず使用するものではありません。
下顎の成長が悪い場合に特に使用します。
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バイオネーターの効果と適用時期
リップバンパー
この装置はリップバンパーといい、唇の力を利用します。
唇の前に、パッドがあり、このパッドを取り外しして使用します。
パッドを唇が押す事によって、奥歯が後ろに移動していきます。
そのため、乳歯が早く抜けて奥歯が前にきてしまった場合にも使用できます。
奥歯が後ろに移動すると隙間ができるため歯が綺麗に並びます。
関連サイト
リップバンパーにおける歯列の変化
ムーシールド
この装置はムーシールドといい、舌と唇のバランスを整えます。
筋肉のバランスが悪く、受け口になってしまった場合に使用します。
このムーシールドは子供の時期でも早期の時期に使います。
小学校に入る前の、3〜5歳の時期に使用する場合が多いです。
3.子供の矯正で使用する固定式矯正装置
次は子供の時に使用する、固定式矯正装置を説明します。
固定式矯正装置は子どもの意思にかかわらず、装着されていますので可撤式矯正装置と違って、効果が出やすいです。
クワドヘリックス
このクワドヘリックスという装置は歯の幅を広げます。
先ほどの可撤式矯正装置の拡大床と役割は同じになります。
どちらも骨の幅を広げる事はできませんので拡大には限度があります。
急速拡大装置
この急速拡大装置は、上顎の骨を割って骨の幅を大きく広げます。
クワドヘリックスや拡大床と違って、骨ごと広げることが可能です。
適応症は上顎が小さい、受け口の人が対象になります。
この急速拡大装置は真ん中にねじ穴があり、毎日、家で2週間拡大してもらいます。
リンガルアーチ
このリンガルアーチは色々な使い方がありますが、主に歯を前に出す時に使用します。
特に受け口の場合に使うことが多いです。
太い針金に細い針金(弾線)が付いており、この弾線を調整して歯を動かします。
タングガード
このタングガードは、前歯が噛んでいない、開咬という症例の時に使用します。
舌癖といって舌を前に出す癖があると、舌で前歯を押してしまいます。
そうすると前歯が噛まなくなってしまうため、そういう癖がある場合に使用します。
4.子供の矯正で使用する顎外固定装置
通常は口の中で固定源を求めて歯を動かしていくのですが、顔のひたいや顎を固定源にして、矯正力をかけていきます。
順に説明します。
上顎前方牽引装置
この上顎前方牽引装置は、上顎骨を前方に成長させる装置になります。
上顎骨が劣成長の受け口の症例に使用します。
口の中には下図のような固定式装置が入ります。
口の中にフックがあり、そこにゴムをかけて引っ張ります。
チンキャップ
このチンキャップは、下骨の成長を抑制させる装置になります。
そのため受け口の治療で使います。
主に、受け口の原因が下顎の過成長の場合に選択します。
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頤帽装置が成長発育中に及ぼす影響
ヘッドギア
このヘッドギアは、上顎骨の成長を抑える装置になります。
そのため出っ歯に使用します。
上顎骨の過成長が原因で出っ歯になっている時に選択します。
また強い力で引っ張ると、上顎骨の成長を抑制しますが、少し弱目の力をかけると、大臼歯が後ろに移動します。
このヘッドギアは引っ張る方向や長さを変えることによって、大臼歯が色々な動きをします。
全部で9パターンの動かし方があります。
5.子供のマウスピース矯正「インビザラインファースト」
このマウスピース矯正は取り外せるため、可撤式矯正装置の分類に入ります。
ただし、少し特殊のため個別に説明します。
子供の矯正をマウスピース矯正でする場合、インビザラインという商品を使用します。
インビザラインの効果については下記をご参考ください。
《関連情報》インビザラインは効果がある?ない?|疑問に答えます!
期間は1年6ヶ月になりますが、この間に拡大や下顎を前方に成長させたりします。
下顎を前方に成長させるので、バイオネーターに近いイメージになります。
下図のようにマウスピースにウイングが付いており、これを利用して成長させます。
また、ガタガタがあれば歯並びも綺麗にして永久歯が綺麗に萌出しやすい環境を作ります。
《関連情報》インビザラインというマウスピースで子供の歯並びは治せる??
まとめ
子供の矯正は様々な種類の装置を使用します。
大きく分けて可撤式矯正装置、固定式矯正装置、顎外固定装置があります。
しっかりと診断を行い、その診断に基づいた装置の選択が大事になります。
よく一般歯科であるような「とりあえず幅を広げましょう」などはありえません。
子供の矯正治療は、将来の予後を左右する大事な治療のため、良い先生に診てもらいましょう。
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最後までご覧頂きありがとうございました。