矯正専門医ブログ

矯正治療後の保定装置(リテーナー)の悩みが全てわかる!

:2021年2月17日 :2020年1月31日

日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
増田 丈浩


口の中を指差す女性
矯正後に保定装置を使用するのを知っていますか
せっかく矯正治療で歯並びが綺麗になったらずっと維持したいと思います。

「えー、矯正しても元に戻るの?」

「少し下の歯がガタガタになってきた」

色々な声が聞こえてきそうです。

矯正治療後は終わった後の保定期間というのも非常に大事です。

目次

1.保定とは


まず保定とは何でしょうか。

矯正歯科治療はワイヤーやマウスピースで、歯を動かしておしまいではありません。

矯正歯科治療後は保定期間に移行します。

歯は動いた後に元に位置に戻ろうとするのを知っていますか。

そのため歯が動いて綺麗になった場所に落ち着いてくれるまで、固定する必要があります。

それが保定です。

出っ歯で抜歯をした場合は保定がうまくできないと、隙間が空いて前歯が前に出ます。

またガタガタが強く抜歯した場合、保定がうまくできないと再度ガタガタになってしまいます。

矯正治療の満足度は高い結果となっておりますので保定をサボってしまうと満足度が減ってしまいます。

関連サイト
日本臨床矯正歯科医会/患者意識調査

2.保定装置(リテーナー)の種類

保定装置は大きく分けると固定するタイプと取り外しの2種類があります。

まずは固定式から説明します。


ワイヤー固定(フィックスリテーナー)

歯の裏側にワイヤー固定をしている
これは歯の裏側にワイヤーをセメントで固定するタイプです。

固定する本数は前歯6本か、小臼歯までを含む8本になります。

固定する本数は症例によって違ってきます。

次に取り外しのできる装置には、床装置のタイプとマウスピースがあります。

ワイヤーにプラークがつきやすくなりますが、きちんと手入れすれば歯周組織に影響はないと言われています。

関連サイト
J-STAGE/固定式保定装置が歯周組織に及ぼす影響


床装置の保定装置

ベッグリテーナーやホーレイリテーナーなどで呼ばれています。

ベッグリテーナーという保定装置
上図はベッグリテーナーです。

前歯にはワイヤーが通るため少し目立ちます。

透明のプラスチックのタイプもありますが、強度が少し弱いので取扱に注意が必要です。




マウスピースのリテーナー

透明の取り外しのできるタイプのリテーナーです。
マウスピースタイプのリテーナー

見た目は良好ですが時間が経つと少し色が変わってきます。

傷がつくので透明度が低くなるイメージでしょうか。

また保定装置は寝ている時も使用するため、歯ぎしりで穴が空いたり変形することがあります。

材質は少し弱いので着脱は丁寧に行う必要があります。

3.保定装置(リテーナー)の期間はいつまで?

保定期間は元の歯並びからどれだけ移動したかにもよりますが、一般的に2年から3年になります。

保定開始して最初の1年間は非常に大事になります。

外した直後が歯の後戻りが起こりやすいため、ご飯や歯ブラシする時以外は使用する必要があります。

保定は先生によって考え方が異なるので、一律ではありませんが段々使用する時間を減らすことが多いです。

保定開始から1年以内は22〜23時間

1年から2年は寝るときに使用

2年後からは装置なし

のようなイメージです。

ただし保定期間が終わっても、多少の後戻りはどうしてもあります。

そのため保定装置を2年経過しても、1日2〜3時間使用できるのであれば、使用した方がより後戻りに対してのリスクがなくなります。

下記に参考の論文を載せてありますので興味ある方は見て下さい。

関連サイト
矯正治療後の長期安定性

4.ワイヤー固定(フィックスリテーナー)は一生つけるの?


それではワイヤー固定(フィックスリテーナー)の場合はどうでしょうか?

こちらは歯の裏側についているため、取り外しはしなくていいです。

なので実質24時間使用していることになります。

考え方として2つあります。

歯は噛む力で段々動いていくので、保定をしっかりしても長い年月をかけて、少し戻る場合もあります。

そのため予防として2年経過した後も、固定式の保定装置を使用する考えです。

一生つけておけば後戻りのリスクは、ほとんどなしにできますからね。

ただし違うリスクが出てきます。

それは何か?

固定式の装置は後戻りは基本的にしないですが、どうしても裏側に歯石や汚れがたまってしまいます。

その結果虫歯や歯周病のリスクが増えてしまいます。

患者さんが元々リスクが低く、歯ブラシも上手なのであればそのままつけておくのも良いと思います。

虫歯や歯周病のリスクが高かったり、歯ブラシが難しいのであれば2年経過後は、固定式の装置を外して保定終了になります。


《関連情報》矯正治療のリスク、デメリット

5.保定の治療は何するの?

矯正治療で使用する器具

保定時は後戻りしていないかをまず確認します。

その後、装置の変形や脱離がないかを見ます。

取り外しの床装置であれば、ワイヤー部分が緩んでないか確認します。

緩ければ締め直します。

また床装置の場合、しっかり噛ませたい部分があれば、少し削って歯が噛むように調整することもあります。

写真を撮って前回と変わってないか見る場合もあります。

6.取り外しの保定装置が壊れた、割れた

口腔内に入った保定装置

装置が壊れた場合はすぐに矯正歯科医院に連絡しましょう。

そのまま置いておくと歯が後戻りしたり、壊れたところに頬や舌が当たって、怪我をする可能性もあります。

矯正歯科医院では割れたところを修理できるのであれば、樹脂で元に戻すことも可能です。

そうすれば治療も1回で済みます。

大きくかけていたり復元できない場合は、再度型取りをして作り直しになります。

そのため来院回数は2回になります。

7.ワイヤー固定(フィックスリテーナー)が外れた

ワイヤー固定が取れた場合は、すぐ矯正歯科医院に連絡しましょう。

取れたままにしておくと、歯が後戻りしてしまいます。

取れてすぐ矯正歯科医院にいけば、後戻りしていることもないため再着して追われます。

もし放置しておいて後戻りしていると、再治療になります。

再治療になると、またワイヤーなどの装置の付け直しになってしまいます。

8.後戻りしてしまったら


保定をしっかりしないと後戻りしてしまいます。

後戻りが軽度の場合や容認できるのであれば、そのまま保定装置をしっかり使用してこれ以上悪くならないようにしましょう。

《関連情報》矯正治療後に後戻りした!どうすればいいの?


一方容認できない場合は再治療になります。

その際はワイヤーやマウスピースで、再度矯正歯科治療が始まります。

それぞれ特徴があるので理解しておいた方が良いです。


《関連情報》マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いは?

 

審美性を考えて裏側矯正とマウスピース矯正で迷われる方も多いです。

下記を参考にしてください。


《関連情報》マウスピース矯正と裏側矯正の違い|どっちを選べばいい?


費用に関しては、矯正歯科医院ごとに変わりますので確認しましょう。

下顎の劣成長がある症例の場合、下の歯がガタガタになっているケースが多いですが、そういう方は特に後戻りしやすいので注意しましょう。

関連サイト
昭和歯学会雑誌/保定期間における後戻り様相について

9.保定装置(リテーナー)の洗浄方法

保定装置にお湯をかけて洗浄するのはダメ

保定装置は歯ブラシを使用して磨きます。

ただし歯磨き粉を使用すると、研磨剤が入っているため傷がつきかえってバイ菌が溜まりやすくなってしまいます。

またお湯につけると変形する恐れもあるため、熱湯は控えてください。

保定装置の洗浄頻度

基本的に毎日歯ブラシで洗うようにしてください。

ただし洗浄液につける場合は、購入した洗浄剤の説明書をよく確認してください。

洗浄剤は使用する時間を守らないと、ワイヤー部分が腐食することもあるので気を付けましょう。


保定装置にポリデントは使用できるの?

ポリデントは保定装置に使用できます。

何故でしょうか?

実は入れ歯と保定装置の素材はほとんど同じです。

そのため使用時間を守れば、ポリデントは使用できます。

《関連情報》保定装置の掃除、お手入れの仕方は大事です!

 

10.保定装置(リテーナー)はしゃべりにくいし滑舌が悪い?

子供が保定装置をはめようとしている 

保定装置は最初はいると違和感があります。

特に床装置タイプのリテーナーだと、歯茎が覆われるため舌が当たって話しにくい場合があります。

また滑舌も最初は悪くなる可能性があります。

これも個人差がありますが、全く大丈夫な方もいれば、話しにくいという方も見えます。

ただし皆慣れてちゃんと話せるようになるため、ご安心ください。

マウスピース矯正が終了して、マウスピースで保定することになる場合は環境が変わりませんので基本的に問題ありません。


11.保定装置をサボるとどうなるの?


中々装置が使えず、サボる人も中にはいます。

そうするとどうなるでしょうか?

最初は装置を入れると、きつい感じが出てきます。

そこからまた使えば、きつい感じもなくなります。

それでも使わないと装置自体が入らなくなります。

どうなっているかというと、後戻りして歯に入らない状態です。

そうなってしまうと再治療するか、もしくはまた新しく保定装置を作り直すことになってしまいます。

保定装置はちゃんと決められた時間使用しましょう。


12.保定装置(リテーナー)でホワイトニング?

マウスピースタイプのリテーナーにホワイトニングの薬液を入れている

たまに聞かれるのですが、保定装置でホワイトニングできますか?という質問を受けます。

実はできる装置とできない装置があります。

できるタイプのリテーナーはマウスピースの保定装置になります。


《関連情報》矯正治療とホワイトニングは同時にできる?|費用や順番もまとめました


なんとなくイメージ付きますよね。

また矯正治療中も、インビザラインであればホワイトニングできます。

関連サイト
咬み合わせの科学/アライナーとホワイトニングの併用における満足度の向上について

ただし厳密にはホワイトニングで使用するマウスピースは、薬液が出ないように工夫して作られています。

少しでも薬液が漏れる感じがあれば使用しないでください。

そのため、最初からホワイトニングでも使用したいと矯正歯科に伝えれば、保定とホワイトニング兼用のリテーナーを作ってもらえる可能性はあります。

またインビザラインの治療中のホワイトニングだと、アタッチメントが付いています。

アタッチメントが付いていたところも外した後、白くなっていますのでご安心ください。

《関連情報》インビザラインのアタッチメントって目立つ?痛い?

13.保定装置(リテーナー)の費用


保定装置の費用は矯正歯科医院によって違います。

費用がかからない場合もあれば、1装置3万円で上下で6万円といった矯正歯科もあります。

また初めは無料でも壊したりした場合は、費用が発生するケースもあります。

作り直しの理由でよくあるのは

・外食の際外して忘れてきた

・踏んで割れてしまった

・旅行先で忘れてきた

などがあるため外した後、無くさないように気を付けましょう。

値段も再度作る際はどうなるか、よく確認することも大事です。

まとめ

保定は矯正歯科治療と同じくらい大事です。

そのため矯正歯科医院でいわれた使用時間を、必ず守るようにしましょう。

保定装置を使用せずに後戻りした場合、再治療に費用がかかることもあるのでしっかり装着しましょう。

また保定装置が壊れたり外れたりした場合は、後戻りの原因になるためすぐに病院に連絡してください。

最後までご覧頂きありがとうございました。

 

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日本矯正歯科学会認定医 歯学博士


増田 丈浩