日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
増田 丈浩
矯正歯科を選ぶポイント
皆さんはどのようにして矯正歯科を選んでいますか?
『そんなの近いところだよ!』
『口コミを見て選んでる』
など色々な意見がありそうですが、歯医者から見るポイントをお伝えできればと思います。
目次
1.矯正の認定医を持っている医院を選ぶ
現在日本には歯科医師が10万人ほどいます。
その中で、矯正歯科を行う歯医者は何件あるか知っていますか?
実は2万件もあります。
これではどこの歯医者を選べばいいか難しいです。
1つの基準になるのですが、日本矯正歯科学会の認定医と言われる資格が実はあります。
この資格を取得するのは、学会認定委委員会の審査に合格しなければ取得できません。
ではどんな審査が行われているのでしょうか。
審査には1次試験は10症例を提示し、2次試験ではその中の2つの症例に対して、口頭試問が行われます。
この厳しい審査を合格した人にのみ、認定医という資格が取得できるのです。
この資格を有している人数はおよそ3千人。
もちろんこの資格を持っていなくても、上手な歯科医師はいらっしゃいます。
しかしそういった先生を探すのは非常に難しくないですか?
認定医であれば、ある一定の水準はクリアしていると考えて良いでしょう。
次に考えるのが、認定医を持っている先生が常勤かアルバイトなのかです。
常勤であれば毎日先生がいるので予約も取りやすいですよね。
アルバイトの先生が来ている歯科医院だと、月に1、2回しか来ておらず予約が取りにくいです。
また、アルバイトだとたくさんの歯科医院に行っているため、責任感も少なく注意が必要です。
この選び方は、子供でも大人でも同じです。
関連サイト
日本矯正歯科学会/認定医名簿一覧
2.顎関節をしっかり見ているか?
初診で先生が口の中を確認する際に口以外に見ているか?
これが非常に大事になります。
初診では矯正治療の必要性やどのように治療するかを、口の中を見た時に考えます。
その際、顎関節に異常があると治療方針が全く変わってしまいます。
関連論文
日本顎関節学会雑誌/顎関節症を有する不正咬合者に対する歯科矯正学的対応
なので顎関節のチェックは非常に大事になります。
これは大人でも子供でも必ず確認します。
何を確認するのか?
・口を開いて閉じる動き
・顎のズレ
・顎関節に関係する筋肉の触診
などを見ます。
初診で顎関節を見ない先生は、顎関節を重視していないので注意が必要です。
この顎関節をしっかり診断しないと、矯正によって得られる効果が減少します。
どの様な効果があるか知っておくと、矯正のモチベーションも上がるでしょう。
《関連情報》矯正治療の効果について|見た目だけではなく様々な効果があります!
実際に矯正の認定医を持っていても、ここを見ている先生は非常に少ないのです。
そのため、初診を受けて判断するしかありません。
顎関節を見ないで治療をしても、一見キレイに噛みますが、機能的に問題が出るため、歯の寿命が短くなります。
《関連情報》矯正治療で顎関節症にならないようにするためには
3.検査内容を確認(特にセファロ)
精密検査の検査内容も確認する必要があります。
歯型
口の写真(最低5枚)
顔の写真(最低3枚)
パノラマX線写真
頭部X線規格写真(セファロ)
顎関節の診査
これらの検査は必ず必要になります。
大人でも子供でもどれも必要です。
実際にはこれらの検査には、コストがかかってしまいます。
そのため、検査をしっかりせずに診断、治療方針を計画する矯正歯科医もいるとのことです。
また頭部X線規格写真(セファロ)をしていない歯医者もたくさんいます。
セファロ分析は診断の核を担うので絶対に必要です。
関連論文
レントゲンセファログラムによる頭顔部の成長予測
下図 セファロ分析
4.価格が安すぎる矯正歯科は選ばない
価格が安い場合、患者さんはどうするでしょうか?
もちろん病院に行く患者さんの数が増えると思います。
そうするとどうなるでしょう?
予約をとるのが困難になったり、何より一人にかける矯正処置の時間が短くなってしまいます。
またどんどん患者さんが来るので、早く終わらせないとパンクしてしまいます。
そのため、矯正の質が下がる可能性があるのです。
また、矯正の費用が安いということは、先生がその費用分の価値しかないと考えている証拠でもあります。
私の周りで治療が上手い先生で、安く矯正治療をしている先生は誰もいません。
矯正治療をあまり勉強しておらず、片手間でしている先生が、安い費用なら責任も少ないし患者さんが来るからといって、治療をしている先生はたくさんいます。
なので、矯正治療をあまり安くしているところには注意しましょう。
相場というものはありますので、インビザラインにかかる費用については下記をご参考ください。
《関連情報》インビザラインの費用はどれくらい?|正しい値段を知りましょう
そのため、一括で支払うとある程度まとまった費用が必要になってしまいます。
その場合は、デンタルローン という方法もあります。
これによって、月々の支払い金額をコントロールすることは可能です。
《関連情報》矯正歯科でデンタルローン受ける際の悩み9選!
5.矯正の症例が多いのを自慢するのは注意
症例数が多いに越したことはありません。
いろいろな経験を積んでいる証拠ですから。
ただし、価格が安いと症例数も増えるので、そこは注意しなくてはいけません。
結論から言うと、症例の多さと矯正治療の上手さは比例しません。
どんなに症例数が多くても、早く終わらすようなまわす治療をしていれば意味がないのです。
一番大事なのは症例ごとにしっかりフィードバックしているかになります。
6.子供でも大人でも話を聞いてくれる先生を選ぶ
初診の際にしっかり話を聞いてくれるかも大事になります。
矯正治療は年単位になります。
ここができていないと、途中に何か問題が起こっても聞いてくれません。
実際に話してみて、自分に合っているのかも非常に大事です。
長い付き合いになりますからね。
子供もせっかく通うなら楽しい先生がいいと思います。
またしっかり説明をしてくれるかどうかも重要ですので、合わせて確認しましょう。
子供の歯が並びきらないという理由で、十分な説明もなく、いつの間にか抜歯された、という話も聞きます。
正直、コミュニケーション不足で子供の矯正で失敗しているも見かけます。
抜歯することもありますがちゃんとした根拠が必要です。
選ぶ際は慎重に矯正歯科を選びましょう。
《関連情報》子供の矯正で失敗しないためには|後悔しない選び方
7.メリット、デメリットを話す矯正歯科を選ぶ
矯正治療の方法は1種類ではありません。
抜歯をするプラン、抜歯をしないプランなど色々な方法があります。
プランそれぞれにメリット、デメリットが存在するのです。
メリットしか言わない歯科医師は要注意です。
矯正治療だけではないですが、メリットしかない治療法などありません。
マイナスの情報もしっかり話してくれるかどうかも、矯正歯科医院を選ぶ1つのポイントになります。
《関連情報》矯正治療のリスク、デメリット
8.様々な治療計画、治療方法を話してくれる
臨床経験を積んでいる矯正の先生は、口の中を見ただけである程度診断し、治療計画の立案が出来ます。
難しい症例の場合もありますが、話がコロコロ変わる先生は要注意でしょう。
治療計画がしっかりまとまっていれば、費用や治療期間もある程度話すことが可能です。
またどの患者さんにも同じ治療方法の先生には気をつけましょう。
具体的にはまずは拡大装置、プレオルソ、マイオブレース、MRCなど使用するところです。
子供の矯正の装置は様々あり、診断に基づいて装置を選択しなくてはいけません。
《関連情報》子供の矯正|装置の種類は大きく分けて3種類あります!
「とりあえず拡大しましょう」などありえません。
そういうところは、大体的にホームページでお勧めしてるところが多いです。
大人の矯正装置にはマウスピース矯正、裏側矯正、表側矯正と様々あります。
マウスピース矯正はいまいち信じられない、という人も実際多いです。
そのような方はマウスピース矯正の効果についてまとめてあるので下記をご参考ください。
《関連情報》インビザラインは効果がある?ない?|疑問に答えます!
患者さんに適したものを選択することが大事です。
審美性を考えて裏側矯正とマウスピース矯正で迷われる方も多いです。
詳しくは下記を参考にしてください。
《関連情報》マウスピース矯正と裏側矯正の違い|どっちを選べばいい?
歯並びは同じ人は誰もいません。
これは生まれつきの歯の大きさ、顎の状態、ライフスタイル、既往歴などによって異なるので同じ噛み合わせになることはないのです。
その異なった歯並びに対して同じ治療法というのはあり得ません。
まとめ
矯正歯科を選ぶのはやはり難しいです。
知り合いが実際に矯正治療を行なって、上手く行っているところを紹介してもらえれば安心ですが、中々そういう事も少ないと思います。
そのため矯正の認定医というのは一つの基準になると思います。
また、顎関節をしっかり見ている先生の方がより安心でしょう。
そのため、一度カウンセリングを受けて判断するのも1つの方法だと思います。
最後までご覧頂きありがとうございました。