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受け口の歯並びで悩んでる方へ|疑問を解決します

2020年1月19日

日本矯正歯科学会認定医 歯学博士

増田 丈浩


受け口(下顎前突)の矯正治療

主に下の前歯が前に出ていて、目立っている状態の事を「受け口」と呼んでいます。

 

学校歯科検診の中にもちゃんと項目としてあります。

『下顎が前より出てきた』

 

『下の歯が前にあるのが気になる』

色々な悩みがあると思うので順に説明していきます。

1.受け口は矯正治療で治る?治らない?



矯正治療で受口は治るのでしょうか?

結論からいうと、矯正治療で受口は治ります。

ですから安心してくださいね。

ただし介入する時期によって、治療法が変わります。

治療法は後で詳しくお話しします。

顔貌を治す場合は、早期から治療する方が可能性があるでしょう。

大人で顔つきも治そうとすると、手術が必要になる場合があります。

2.受け口の矯正治療は何歳からした方がいい?


受け口の矯正治療は早ければ早いほどいいです。

まだ大人の歯が生えていなくても、子供の出来具合にもよりますがなるべく早く始めるべきです。

実は骨格的な原因がある場合、上顎骨の成長を促すことが多いです。

この時期は大体5歳前後になり、成長のピークが起きます。

そのため、この時期に矯正治療ができることはメリットが大きいです。

《関連情報》子供の矯正治療について|疑問にお答えします

 

3.受け口の治療期間はいつまで?



受け口の矯正治療は長期になります。

先ほど早く始めた方がメリットが大きいと、説明しました。

その理由に、上顎骨の成長のピークが5歳前後にあるからと、お伝えしましたね。

実は下顎骨の成長のピークもあり、人によって異なりますが13歳〜15歳くらいにくることが多いのです。

身長がグッと大きくなるときは、下顎骨も一緒に成長してきます。

そのため12歳まで歯並びが問題なくても、13歳から急に下顎が前に成長し、歯並びが受け口になることがたまにあります。

通常12歳くらいから、Ⅱ期治療といってワイヤー矯正やマウスピース矯正でしっかり噛ませていくのですが、受け口の場合は下顎骨が前に出ないか、確認してからⅡ期治療に入る必要があります。

そのためⅡ期治療も2年から3年かかりますので、高校生まで治療しなくてはいけない場合もあります。


《関連情報》矯正治療の期間はどれくらい?


矯正の治療期間を短くする方法もあるので参考にしてください。


《関連情報》矯正を短期間に早く終わらせる方法とは!?

 

4.受け口の原因



受け口を治療する際に大事なことがあります。

 

それは何故受け口になったかです。

 

原因が骨にあるのか、それとも歯にあるのか確かめる必要があります。


受け口は骨格が原因の場合と、歯が原因の場合の2つのタイプがあります。

 

順番に説明していきます。

 

骨格が原因の受け口

上の歯は上顎骨、下の歯は下顎骨という骨にそれぞれ埋まっています。

 

これらの前後的なバランスが崩れることによって、受け口や出っ歯になっていきます。

遺伝的な原因や、成長時に起こる悪習癖によって、骨格的な問題が起きてきます。

骨格的な問題がある中でも、いくつかのパターンがあります。


骨格が原因で受け口になる場合

上顎骨が問題ないが下顎骨は前にある

 

上顎骨は後ろにあるが下顎骨は問題ない

 

上顎骨が後ろにあり下顎骨が前にある

 

この3パターンがあるのですが、最後の上顎骨が後ろにあり下顎が前にある、が重度の受け口になります。

 

歯が原因の受け口

上の歯が問題ないが下の歯は前に出ている

 

上の歯が後ろに下がっているが下の歯は問題ない

 

上の歯が後ろに下がっており下の歯は前に出ている

 

この3パターンになりますが、最後の「上の歯が後ろに下がっており下の歯が前に出ている」

 

が重度になります。

 

臨床では、骨格的な問題と歯性的な問題が混ざっています。

 

この問題をどのように診断するかというと、セファロという横顔のレントゲンを撮影して診断していきます。

 

どのように診断するかというと、横顔のレントゲンに基準となる点をプロットします。

 

基準点を3点プロットすると、角度が測れますのでこの角度の大きさで判断していきます。

 

この角度で上顎骨、下顎骨の前後的位置関係や上下の歯軸傾斜の度合いを判断していきます。

 

この歯軸を無視して治療を行うと、矯正歯科治療後に後戻りの原因になってしまうので非常に大事です。

 

《関連情報》矯正治療後に後戻りした!どうすればいいの?

 

では、この診断をどのように矯正治療に反映するかというと、受け口の矯正治療は実は大人と子供で大きく変わってきます。


順番に説明します。
 

 

5.子供の受け口の矯正治療方法は?

骨格的な原因と歯が原因の受け口がありますが、まずは骨格が原因の受け口から説明していきます。

骨格が原因の受け口

 
上顎骨は問題ないが下顎骨は前方にあるケース

この場合は、下顎骨がこれ以上前にこないような装置を入れる必要があります。

 

チンキャップといって、下顎骨を後ろに引っ張る装置を使用することにより、下顎骨の成長を抑制できます。

 

この装置は取り外しができるタイプで、毎日使用すると効果が出てきます。

                  上図 チンキャップ 

 

上顎骨が後ろにあり下顎骨は問題ないケース
このケースの場合、成長を促進して上顎骨が前方にくるように成長すると、良い結果が得られます。

 

使用する装置としては前方牽引装置(フェイシャルマスク)を使用します。

 

こちらはゴムを使用して上顎骨を牽引していきます。

 

この装置も取り外しができるタイプで、家にいるときに毎日使用することによってより効果が高まります。

                          上図 前方牽引装置


上顎骨が後ろにあり下顎骨が前にあるケース

この場合は前方牽引装置を使用していきます。

 

この理由として上顎骨を牽引する際、パッドで下顎骨も押さえているためある程度抑制できるからです。

 

歯が原因の受け口

上の歯は問題ないが下の歯が前に出ているケース
この場合はリップバンパーという装置を使用します。

 

この装置は下口唇の機能的な力を利用して、下の奥歯を後ろに移動させていきます。

 

後ろに移動させることによって生じた隙間は、下の前歯を中に入れるスペースとして使用します。

 

                          上図 リップバンパー

 

下の歯は問題ないが上の歯が後ろに下がっているケース
このケースは上の前歯を前に移動させます。

 

子供の場合は、リンガルアーチという装置を使用するしていきます。

 

この装置は主線といって、太い針金に細い針金がついており、この細い針金で前方に出していきます。

 

ただし、出す際に下の歯が邪魔で動きにくいため、下の歯に噛み合わせをあげるマウスピースを使用することもあります。

 

                         上図 リンガルアーチ

  
 

上の歯が後ろに下がっており下の歯が前に出ているケース
このような状況の時は、リンガルアーチとリップバンパーを併用して矯正治療することもありますが、ケースとしてはかなり少ないです。

 

子供の時期から受け口の矯正治療するメリットは、何と言っても手術する可能性が減ることになります。

 

下顎骨の成長は、上顎骨と違って成長するタイミングは始まるのが遅い分、中学生くらいまで成長するので装置の期間は長くなることが多いです。

 

また成長を利用するできるため、上顎骨と下顎骨のバランスが良くなり、口元や横顔も良くなります。

 

6.外科手術なしの大人の受け口の治療方法



大人の場合は、成長は望めないので成長を抑制、促進するような骨格的な改善は見込めません。

 

そのため歯のみを動かして治療していきます。

使用する装置は、マウスピース矯正やワイヤー矯正になります。

《関連情報》マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いは?


審美性を考えて裏側矯正とマウスピース矯正で迷われる方も多いです。

下記を参考にしてください。


《関連情報》マウスピース矯正と裏側矯正の違い|どっちを選べばいい?

また使用する矯正装置によってはホワイトニングが同時に可能になります。

矯正の装置によっては、治療後にホワイトニングをした方が良いです。


《関連情報》矯正治療とホワイトニングは同時にできる?|費用や順番もまとめました

部分矯正で対応できる可能性もありますが、多くは全体矯正をして治療した方が良いです。

なぜかというと、部分矯正だと、噛み合わせが悪くなる可能性があるので、注意が必要になります。

前歯だけがきれいになっても噛み合わせが悪くなり、将来歯がなくなるリスクが増えるのは、避けなくてはいけません。


《関連情報》部分矯正と全体矯正の違いって知っていますか?

 

受け口を治すには、下の前歯を後ろに移動させないといけません。

 

そのために、隙間を作る必要がありますが受け口の場合は

 

奥歯を後ろに移動させる

 

歯と歯の間をわずかに削る


抜歯

 

この3つがあります。

順番に説明します。 

奥歯を後ろに移動させる
下の歯を後ろに移動させる場合は、平均して2〜3mm後ろに移動させることができます。

 

この時には患者さんがつけるゴムも使用します。

 

これができないと治療が成功しません。


《関連情報》矯正歯科治療で使用するゴムの疑問は全て解決!

 

ただしこの場合、下の奥歯の後ろに骨がないと移動できないため、セファロやCTを撮影して確認する必要があります。

 

また親知らずがある場合、抜歯してから治療することが多いです。

 

奥歯を後ろに移動させるのは、インビザラインが非常に得意ですので、中等度の受け口はインビザラインを使用して治療すると非抜歯で治ることも多いです。

  

《関連情報》 インビザライン は歯を抜かない非抜歯の治療が得意!

 

歯と歯の間をわずかに削る
受け口を治療する際に、歯を削ることだけで対応するのは少ないです。

 

歯の間を削る場合、0.5mmまでは凍みたり虫歯になる可能性は少ないと論文で報告されています。

 

抜歯や奥歯を後ろに移動して矯正治療する際に、合わせて行うことが多いです。


《関連情報》矯正治療で歯を削るストリッピングのメリットデメリットは?

 

セファロ撮影での分析結果は、どの方法で治療するにしても非常に重要になります。

 

セファロの分析によって前歯の角度、位置を決めていきます。

 

前歯の位置を決めてから、奥歯の位置を固定するか前後に移動させるかを決めていきます。

 

奥歯の位置によって、口の中に入れる装置が変わる場合もあるので重要な要素になります。

 

矯正治療するときは、歯軸を適正な角度に位置付けるような治療方針を組み立てます。

 

その際、奥歯を移動させないようにするために、インプラントアンカーを用いて固定する場合もあります。


《関連情報》 なぜインプラント矯正は常識をくつがえす治療法なのか?


抜歯

受け口の度合いが強い場合は抜歯が必要になる可能性があります。


ただし受け口で下の歯のみを抜歯することは少ないです。

理由は下の前歯の骨は非常に薄いので、抜歯のスペースを全て前歯を中に入れることはできず、一部のみになるからです。

 

《関連情報》 矯正治療の抜歯の必要性について

 

7.受け口で外科手術するって本当?



先ほどお伝えした方法で治らない重度の受け口は、手術をして治療する場合もあります。

手術には下顎のみの手術と、上顎も同時にする場合など色々な方法があります。

受け口は重度だと手術して治療することも多いです。

確かに手術は怖いと思います。

ただしメリットもあります。

受け口は特徴的な顔貌をしています。

矯正単独では顔つきは治せませんが、手術を併用すれば可能になります。

順序として

術前矯正→外科手術→術後矯正

となります。


8.受け口の矯正は保険適応?



「受口の矯正治療は保険適応という話を聞いたことがある」とたまに言われます。

これは本当なのでしょうか?

実は通常の受口の矯正治療は、保険適応ではありません。

ただし、外科手術を伴う矯正治療は保険適用になります。

これは重度の受口だと、顎変形症という病気と考えられているからです。


《関連情報》矯正治療は保険適用になるの?

まとめ

受け口は早期に矯正治療をした方が良いです。

また子供の矯正治療は原因に基づいて治療法が変わりますので、原因を診断することが非常に大事になります。

悪習癖があるときは改善するようなトレーニングも必要になります。

歯列矯正を子供の時にすれば受け口が悪化するのを防げます。

受け口なのにあまり放っておくと、大人になって矯正治療をしようとしても、外科矯正といって手術をしないと治らない人もいるので注意しましょう。 


最後までご覧頂きありがとうございました。

 

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日本矯正歯科学会認定医 歯学博士

 


増田 丈浩