日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
デンタルインプラント と矯正用インプラントの違い
インプラント矯正は最近非常に有用性が高まってきました。
インプラントと聞くと、歯を失ったとこに骨の中に埋め込む、チタン製のデンタルインプラントを想像される方が多いかもしれません。
今回お話しするのは、矯正歯科治療に用いるインプラントのため、少し意味が違ってきます。
目次
1.目的
デンタルインプラントは、失った歯のところに埋入し、自分の歯のように噛めるようにしていきます。
口の中で長期に渡って機能できるよう、表面構造もかなり特殊な作りになっており、骨とインプラントが結合するよう様々な工夫がされています。
矯正用インプラントの主な目的は、奥歯の歯が動かないよう、固定源の強化で使用されます。
基本的に矯正歯科治療は歯を動かすと、作用 反作用がかかり動いて欲しい歯と動いて欲しくない歯が出てきます。
この動いて欲しくない歯を、矯正用インプラントを使用して止めるイメージです。
今まで動いて欲しくない歯がある場合、ヘッドギアや顎間ゴムといった患者さんに自分で使用してもらう補助道具が必要でした。
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↓ ヘッドギアのイメージ図
そのため、患者さんの負担が大きく使用できない方もいらっしゃいました。
また、ゴムを使用すると他人から見えるため、見た目が気になる方には抵抗があり中々使用してもらえない場合もあります。
矯正用インプラントは、チタン合金というものでできており、生体親和性は高いですが、矯正治療後に外すことが必要なため特殊な表面処理はされていません。
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2.インプラント矯正の大きさ
デンタルインプラントの大きさは、基本的には直径4〜6mm、長さ10〜13mm程になります。
矯正用インプラントの大きさは、メーカーによって違いますが直径1.5〜2mm、長さは5〜6mmでかなり小さいです。
形も一般的に見られるネジのような形をしています。
症例や部位によって大きさ、直径を診断の元に使い分けます。
3.処置
デンタルインプラントの場合、血圧、脈拍などのバイタルサインを測定しながらの処置になります。
全身麻酔や局所麻酔を行なって、歯茎を切ったり切った部位を縫ったりなどの処置が必要になります。
治療時間は大体90分くらいになります。
矯正用インプラントでは少量の麻酔を行い、歯茎を切ったり縫ったりする必要性はありません。
痛みもほとんど感じる事はなく、痛み止めのお薬を飲まない方も多いです。
埋入した日も、普段通り生活できますしもちろんご飯も食べることが可能です。
治療時間は5〜10分くらいで本当にすぐに終わります。
皆さんネジを打つと言うと、身構えられる方が多いのですが、あっという間に終わるので拍子抜けする方も多いです。
矯正用インプラントはアンカースクリュー、TADSと呼ぶこともありますが、意味は同じになります。
4.清掃方法
これはデンタルインプラント、矯正用インプラントどちらも歯ブラシによる清掃は必要になります。
天然の歯ではないので、虫歯にはなりませんが歯周病にはなります。
歯ブラシが当たっていないと、汚れが溜まることによって感染を起こし歯周病が進行します。
脱落する原因にもなりますので、しっかり歯ブラシを当てて汚れを取る必要があります。
矯正用インプラントの場合は、歯の場所にないため意識して磨かないといけません。
周りは歯茎に囲まれているため、強く磨き過ぎると傷ができたりしてしまうので、優しく磨いたり柔らかい歯ブラシで磨くと効果的です。
うがい薬に歯ブラシをつけて、矯正用インプラントの周りを磨くとより効果的です。
まとめ
インプラント矯正とデンタルインプラントの違いは理解できましたか?
名前は似ていますが、処置や目的は全く違います。
特に、インプラント矯正はほとんど痛みもなく、5分ほどで処置が終わってしまうので負担も少ないです。
また、インプラント矯正をすることによって、よりクオリティの高い矯正治療ができ、治療期間も短くなるためできる症例であればオススメします。
最後までご覧頂きありがとうございました。