矯正専門医ブログ

矯正治療の抜歯について|疑問をまとめました

:2020年8月9日 :2019年11月30日

                   

日本矯正歯科学会認定医 歯学博士

増田 丈浩

 

矯正歯科治療における抜歯の必要性
矯正治療における抜歯についてお話ししようと思います。 

皆さんも聞いたことがあると思いますが、矯正治療には抜歯が必要な場合があります。


もちろん抜歯に関して、良いイメージを持っている方は少ないと思います。

私たちも全ての症例を抜歯するとはもちろん考えておらず、抜歯しない方法も検討します。

ただし抜歯せずに無理やり並べると、歯の軸が悪くなってしまい、矯正治療後に後戻りの原因になってしまうこともあります。

《関連情報》矯正治療後に後戻りした!どうすればいいの?


そのため、どちらが患者さんにとってメリットがあるかで抜歯、非抜歯を判断します。 

また抜歯にすることに対して不安や疑問もあると思います。

『痛いんじゃないの?』

『デメリットは何がある?』

いろんな疑問が皆さんなると思います。

これらを順に説明していきます。

1.抜歯の痛み、腫れ



矯正治療で抜歯する場合、よく抜く歯は小臼歯という歯になります。

下顎の親知らずは歯茎を切ったり骨を削ったりする事が多いので、腫れや痛みは強いです。

ただし小臼歯は親知らずと違って抜くのが簡単です。

そのため痛みや腫れはほとんどありません。

また抜く際も矯正力をかけておくと、グラグラになります。

これによってより簡単に痛みなく抜歯する事ができます。

抜く時間も5分もかからない事が多いです。

2.抜歯後の痛み、腫れはあるの?



抜歯中の痛みがないことはわかりました。

では抜歯した後も痛み、腫れはないのか気になる所ですね。

結論から言うと、痛みはほとんどありません。

骨の中に埋まっている親知らずと違って、骨や歯茎を切ったり削ったりしていません。

そのため、術後の痛みも最小限です。

また化膿止めや痛み止めの薬も出ますので、そちらを飲んでおけば心配はないでしょう。

3.抜歯後に隙間が埋まるのはどれくらい?



抜歯した後はどうしても隙間が空いてしまいます。

そのため、見た目が悪くなる可能性があります。

期間としてはどれくらいでしょうか?

抜くタイミングにもよりますが、半年から1年ほどで気にならなくなる事が多いです。

また抜歯した隙間も段々と閉じてきます。

そのため抜歯の隙間が空いていても、後半はほとんど気にならなくなる人がほとんどです。

4.矯正での抜歯のタイミングは?



抜歯は小臼歯と親知らずによってタイミングが変わります。


小臼歯の場合

ガタガタが強い症例や過度の出っ歯は、小臼歯を抜歯することが多いです。

ガタガタが強い症例ですと、初めに抜歯します。

なぜでしょうか?

先にキレイに並べてから抜歯すると、まず前歯が前に出ます。

そうすると過度に前歯が前に出てしまい、歯茎が下がってしまいます。

また矯正期間も長くなってしまうからです。

出っ歯や口元の突出を治療する場合は、先にキレイに並べてから抜歯します。

そのため、抜歯のタイミングは矯正治療が始まってから3〜5ヶ月後になります。

この理由として、出っ歯や口元の突出の治療をする際、歯を傾けないように移動させる必要があります。

まずは抜歯しないでキレイな直線を作ってから、抜歯して前歯を中に入れて治す治療が多いです。

親知らずの場合

親知らずは場合によって、先に抜歯したり後で抜歯したりします。

先に抜歯する場合は、奥歯を後ろに移動させる場合です。

軽度の出っ歯や受け口の場合、奥歯を後ろに移動させて矯正治療をする場合があります。

その際は親知らずがあると、奥歯を後ろに移動させることができないため、矯正治療が始まるタイミイングで抜歯します。

また親知らずがしっかり生えている場合は、矯正治療する際に邪魔になる可能性もあるので、先に抜歯することもあります。

この辺りは先生の考え方や症例によって異なります。

一方親知らずを後で抜歯してもいい症例は、まだ親知らずが萌出しておらず、奥歯を後ろに移動させない症例です。

下顎の親知らずは横向きになっていることも多く、そのままにしておくと歯を前に押して、せっかくキレイになった歯並びがガタガタになることがあります。

そのため、矯正治療が終わるタイミングで抜歯することも多いです。

ただし、先生によっては先に抜きたい人もいるかもしれませんのでよく相談しましょう。

5.8本も抜歯することがあるの?



8本というのは、小臼歯4本と親知らず4本の場合です。

抜歯するタイミングは症例によって変わるので、それぞれ別の可能性もあります。

上下ガタガタや口元の突出を治療する場合は、上下合わせて8本抜歯するケースもあるでしょう。

親知らずはもともと使われない歯のため、実質は4本と考えていいと思われます。

ただし上の親知らずは治療上、残せそうであれば残したほうが良いです。

この理由としては、どこかの歯が将来、虫歯や歯周病で抜歯になっても、親知らずをダメになった場所へ移植できる可能性があるためです。

6.1本だけ抜歯することもある?



先ほどは8本抜歯する可能性があるとお伝えしました。

今度は逆に1本のみ抜歯することもあるのでしょうか?

多すぎても不安だし、少なすぎても逆に不安になると思います。

結論からいうと1本抜歯はあります。

下の前歯を一本抜歯したり、小臼歯を1本抜歯することもあります。

下顎前歯を一本抜歯する場合は、下の歯がガタガタが強く、一本抜歯すれば奥歯の噛み合わせが良い状態を維持できる場合にします。

小臼歯一本を抜歯する場合は、反対の歯が一本なかったり、左右のズレが著しい場合に抜歯します。

ただし、イレギュラーではありますのでしっかり矯正歯科の先生の話を聞きましょう。

7.抜歯のデメリット

まず抜歯によってどういうデメリットがあるか考えましょう。

順にお伝えします。


歯の本数が減る

当たり前のことですが、歯の本数が減ります。

歯は親知らずを除くと全部で28本あります。

治療する場合、2本もしくは4本抜歯する事が多いです。

2本抜く場合は出っ歯の場合がほとんどです。

また4本抜く場合は、上下ガタガタが強かったり口元が出ている場合に抜きます。

4本抜くと合計24本になってしまうので、確かにデメリットになります。

舌のスペースがなくなる

症例にもよりますが、抜歯することによって前歯が中に入ると舌のスペースがなくなります。

これによって舌根沈下といって、舌が下がり気道が狭くなる事があります。

そのためセファロというレントゲンを撮って、気道の広さを確認し、もともと狭い人は非抜歯も検討していきます。

また矯正治療にはいろいろなリスクが伴います。

知っておいて損はないでしょう。


《関連情報》矯正治療のリスク、デメリット

 

8.抜歯のメリット



抜歯のメリットはなんでしょうか?

抜歯することによって、メリットが大きい場合のみ抜歯します。

どのようなメリットがあるか順に説明します。


口が閉じやすくなる

抜歯することによって前歯が中に入ります。

それによって口が閉じやすくなります。

口が閉じやすくなると、口呼吸していたのが治ったり、また口呼吸のせいで鼻炎が治ることもあります。


口元が綺麗になる

抜歯によって前歯が中に入ると、口元も中に入ります。

特に女性は口元が出ている事が気になる人も多いので、この主訴の方も多いです。

目安としては鼻と顎を結んだ線をEラインといいます。

このEラインより上下の唇が少し中に入っているのが綺麗な横顔と言われています。

そのためその位置まで口元を入れるように矯正治療をします。


《関連情報》矯正でEラインや唇が変化するって本当? 


正しい歯の軸で上下の歯が噛めるようになる

実はこの歯の軸というのは非常に大事です。

歯の軸というのは、セファロというレントゲンをとって測定します。

なぜ歯の軸の角度が大事かというと釘で考えてみましょう。

釘も真上からトンカチで叩かれる分には強いです。

ただし横から叩かれると、簡単に横に傾いてしまいます。

そのため、歯の軸が前に倒れている人は抜歯をして正しい角度で、上下の歯が当たるように治療します。

それによって歯が長持ちしますので、理想的な角度にするのは非常に大事です。

ほとんど口元が出ている人は、歯の軸が前に倒れてしまっている人が多いです。

9.抜歯しないで治療する方法



抜歯しないで治療する方法は3つあります。

順番に説明していきます。


奥歯を後ろに移動させる

奥歯をさらに後ろに移動させてスペースを作ります。

その際、もし親知らずが後ろにあれば基本的には抜歯します。

抜かないとは親知らず以外の歯を抜かないと理解しましょう。

この後ろに移動させる量も限界はあります。

平均すると2〜3mmほど移動できるので、左右後ろに移動できれば4〜6mmスペースを作ることができます。

ただしする際は、骨があるかの診断が必須になります。

後ろに移動させるのは、インビザラインが非常に得意になります。


《関連情報》なぜインビザラインは歯を抜かない非抜歯の治療が得意なのか!?


歯列の幅を拡大する

歯列の幅を広げることによってスペースができます。

このスペースを利用して矯正治療をしていきます。

ただしあまり拡大はできないため、拡大単独で治療するのは難しいです。

ちなみに拡大しても顔の輪郭は変わりませんのでご安心ください。


歯と歯の間をわずかに削る

歯の表面にはエナメル質というものがありこのエナメル質をわずかに削ります。

削る量は0.3mmほどのごくわずかな量になります。

もし10箇所行えば3mmの隙間が獲得できます。


《関連情報》矯正治療で歯を削るストリッピングのメリットデメリットは?

10.抜歯が必要な症例

抜歯が必要な症例はどのような症例でしょうか?

抜歯のメリット、デメリットを考えてメリットが大きい場合や抜歯しないと治らない症例になります。

順番に見ていきましょう。


ガタガタが著しく強い場合

ガタガタが強い場合は、歯を並べる隙間が足らないのに抜歯をしないで矯正治療をしようとすると、前歯を前に出して並べ、横にも拡大して並べていきます。


ただし限度があります。

無理に並べるとどうなるでしょうか?

以下のようなことが起きます。

・前歯が前に出てしまい、口元が出て、横顔が悪くなる

 
・歯は歯槽骨というところに埋まっていますが、そこから飛び出してしまい、歯肉が退縮してしまう

 
・前歯を前に出すため適正な歯の軸を取ることができず予後が悪い


などが起きます。

 
そのため必要に応じて歯を抜歯し、隙間を作って口元の改善、歯の軸を改善し良い噛み合わせを作っていきます。 

出っ歯が著しく強い場合

出っ歯の場合、軽度であれば上顎大臼歯を後ろに移動し、隙間を作り出っ歯を改善していきます。


ただし、後ろに移動できる量も限界があるため重度な方は、基本的には前から4番目の歯を抜歯します。


そのスペースを利用して上の前歯を中に入れていきます。

前歯が中に入るため口元もスッキリしていきます。

インビザラインでも抜歯して治療は可能になります。


《関連情報》インビザラインで出っ歯は治らない?

 

受け口が強い場合

受け口の方は出っ歯と反対の矯正歯科治療になり、軽度であれば下の大臼歯を後ろに移動して隙間を作り受け口を改善していきます。

歯を後ろに移動させても治らない場合は、抜歯をして下の前歯を中に入れていきます。

受け口の人は下唇が出ている事が多いのですが、下の前歯が中に入ることによりある程度改善されます。

ただし受け口の場合は、下の小臼歯2本のみ抜歯すると、噛み合わせをよくするのが難しくなるのであまり行いません。

 
また重度の受け口の場合は、症例によっては外科矯正といって下顎の骨を切る必要もあります。

骨を切って治療するので重度の受け口の人も治療が可能です。

骨を切って受け口を治す際は、自費治療ではなく保険治療になります。


《関連情報》矯正治療は保険適用になるの?

 

口元が出ている場合


上下顎前突という診断がつくことが多いのです。

一見噛み合わせは悪くないのですが、口元を見ると突出しているという状態です。

 
これらの場合は、基本的に抜歯で矯正歯科治療を行なっていきます。

抜歯することによって、上下の前歯を中に入れることにより、口元も改善されていきます。

抜歯する部位


抜歯する場所も症例によって違います。

一番多いのが、第一小臼歯といって前から4番目の歯になります。

また症例によっては、第二小臼歯や大臼歯を抜歯することもあります。

どのように抜歯する部位、本数を決めるのでしょうか?

抜歯する必要性、抜歯する部位、抜歯の本数はセファロというレントゲンや歯並びによって決めていきます。

また奥歯を後ろに移動させる場合は親知らずがあると邪魔になるため抜歯することもあります。

11.抜歯すると小顔になるって本当?

たまに抜歯すると小顔になりますか?という質問があります。

まず小臼歯を抜歯しても小顔にはなりません。

では親知らずはどうでしょうか?

可能性としてはあるとは思います。

可能性がある人の特徴を上げていきます。


下顎(えらの部分)が出ている


抜歯をすると周りの骨が吸収します。

下の親知らずはこのえらに近い部分にあります。

そのため親知らずの場所によっては抜歯によって骨が吸収し、多少えらの部分が少しシャープになる可能性はあります。

頬骨が出ている


上の親知らずは頬骨の側にあります。

そのため上の親知らずを抜歯すると骨が吸収するので頬骨の下あたりの骨が吸収し骨の形が変わるかもしれません。

下顎のエラ部分の筋肉が出ている


上下の親知らずがしっかり噛んでいる場合はその分、エラの部分にある咬筋が発達しています。

その場合、親知らずを抜くと噛む力が弱くなるため、この咬筋の筋力が減少することもあります。

減少することにより筋肉が痩せ筋肉の膨らみが減り、小顔になる可能性はあります。

ただし、しっかり噛んでいる歯を抜歯するのでそこはしっかり考えましょう。

まとめ

皆さん大事な歯なので、抜歯するのが嬉しい人はいません。

ただしメリット、デメリットを考えてメリットが大きい場合に行うようにします。

抜歯自体は下顎の親知らずと違って、歯茎や骨を削る事はないので痛みや腫れはほとんどないです。

また自分が抜歯する症例かも歯並びを見て確認して見ましょう。


最後までご覧頂きありがとうございました。

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なんでもご相談ください。


日本矯正歯科学会認定医 歯学博士


増田 丈浩