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矯正治療の抜歯について|疑問をまとめました

2019年11月30日

                   

日本矯正歯科学会認定医 歯学博士

増田 丈浩

 

矯正歯科治療における抜歯の必要性
矯正治療における抜歯についてお話ししようと思います。 

皆さんも聞いたことがあると思いますが矯正治療には抜歯が必要な場合があります。


もちろん抜歯に関して良いイメージを持っている方は少ないと思います。

私たちも全ての症例を抜歯するとはもちろん考えておらず抜歯しない方法も検討します。

ただし抜歯せずに無理やり並べると歯の軸が悪くなってしまい矯正治療後に後戻りの原因になってしまうこともあります。

《関連情報》矯正治療後に後戻りした!どうすればいいの?


そのためどちらが患者さんにとってメリットがあるかで抜歯、非抜歯を判断します。 

また抜歯にすることに対して不安や疑問もあると思います。

『痛いんじゃないの?』

『デメリットは何がある?』

いろんな疑問が皆さんなると思います。

これらを順に説明していきます。

1.抜歯の痛み、腫れ



矯正治療で抜歯する場合、よく抜く歯は小臼歯という歯になります。

下顎の親知らずは歯茎を切ったり骨を削ったりする事が多いので腫れや痛みは強いです。

ただし小臼歯は親知らずと違って抜くのが簡単です。

そのため痛みや腫れはほとんどありません。

また抜く際も矯正力をかけておくとグラグラになります。

これによってより簡単に痛みなく抜歯する事ができます。

抜く時間も5分もかからない事が多いです。

痛みの期間もほとんどありませんので安心です。

2.抜歯後に隙間が埋まるのはどれくらい?



抜歯した後はどうしても隙間が空いてしまいます。

そのため見た目が悪くなる可能性があります。

期間としてはどれくらいでしょうか?

抜くタイミングにもよりますが半年から1年ほどで気にならなくなる事が多いです。

また抜歯した隙間も段々と閉じてきます。

そのため抜歯の隙間が空いていても後半はほとんど気にならなくなる人がほとんどです。

3.矯正での抜歯のタイミングは?



抜歯は小臼歯と親知らずによってタイミングが変わります。


小臼歯の場合

ガタガタが強い症例や過度の出っ歯は小臼歯を抜歯することが多いです。

ガタガタが強い症例ですと初めに抜歯します。

なぜでしょうか?

先にキレイに並べてから抜歯するとまず前歯が前に出ます。

そうすると過度に前歯が前に出てしまい、歯茎が下がってしまいます。

また矯正期間も長くなってしまうからです。

出っ歯や口元の突出を治療する場合は先にキレイに並べてから抜歯します。

そのため抜歯のタイミングは矯正治療が始まってから3〜5ヶ月後になります。

この理由として出っ歯や口元の突出の治療をする際、歯を傾けないように移動させる必要があります。

まずは抜歯しないでキレイな直線を作ってから抜歯して前歯を中に入れて治す治療が多いです。

親知らずの場合

親知らずは場合によって先に抜歯したり後で抜歯したりします。

先に抜歯する場合は奥歯を後ろに移動させる場合です。

軽度の出っ歯や受け口の場合、奥歯を後ろに移動させて矯正治療をする場合があります。

その際は親知らずがあると奥歯を後ろに移動させることができないため矯正治療が始まるタイミイングで抜歯します。

また親知らずがしっかり生えている場合は矯正治療する際に邪魔になる可能性もあるので先に抜歯することもあります。

この辺りは先生の考え方や症例によって異なります。

一方親知らずを後で抜歯してもいい症例はまだ親知らずが萌出しておらず、奥歯を後ろに移動させない症例です。

下顎の親知らずは横向きになっていることも多くそのままにしておくと歯を前に押してせっかくキレイになった歯並びがガタガタになることがあります。

そのため矯正治療が終わるタイミングで抜歯することも多いです。

ただし先生によっては先に抜きたい人もいるかもしれませんのでよく相談しましょう。

4.8本も抜歯することがあるの?



8本というのは小臼歯4本と親知らず4本の場合です。

抜歯するタイミングは症例によって変わるのでそれぞれ別の可能性もあります。

上下ガタガタや口元の突出を治療する場合は上下合わせて8本抜歯するケースもあるでしょう。

親知らずはもともと使われない歯のため実質は4本と考えていいと思われます。

ただし上の親知らずは治療上、残せそうであれば残したほうが良いです。

この理由としてはどこかの歯が将来、虫歯や歯周病で抜歯になっても親知らずをダメになった場所へ移植できる可能性があるためです。

5.抜歯のデメリット




まず抜歯によってどういうデメリットがあるか考えましょう。

順にお伝えします。


歯の本数が減る

当たり前のことですが歯の本数が減ります。

歯は親知らずを除くと全部で28本あります。

治療する場合、2本もしくは4本抜歯する事が多いです。

2本抜く場合は出っ歯の場合がほとんどです。

また4本抜く場合は上下ガタガタが強かったり口元が出ている場合に抜きます。

4本抜くと合計24本になってしまうので確かにデメリットになります。

舌のスペースがなくなる

症例にもよりますが抜歯することによって前歯が中に入ると舌のスペースがなくなります。

これによって舌根沈下といって舌が下がり気道が狭くなる事があります。

そのためセファロというレントゲンを撮って気道の広さを確認し、もともと狭い人は非抜歯も検討していきます。

また矯正治療にはいろいろなリスクが伴います。

知っておいて損はないでしょう。


《関連情報》矯正治療のリスク、デメリット

 

6.抜歯のメリット



抜歯のメリットはなんでしょうか?

抜歯することによってメリットが大きい場合のみ抜歯します。

どのようなメリットがあるか順に説明します。


口が閉じやすくなる

抜歯することによって前歯が中に入ります。

それによって口が閉じやすくなります。

口が閉じやすくなると口呼吸していたのが治ったりまた口呼吸のせいで鼻炎が治ることもあります。


口元が綺麗になる

抜歯によって前歯が中に入ると口元も中に入ります。

特に女性は口元が出ている事が気になる人も多いのでこの主訴の方も多いです。

目安としては鼻と顎を結んだ線をEラインといいます。

このEラインより上下の唇が少し中に入っているのが綺麗な横顔と言われています。

そのためその位置まで口元を入れるように矯正治療をします。


正しい歯の軸で上下の歯が噛めるようになる

実はこの歯の軸というのは非常に大事です。

歯の軸というのはセファロというレントゲンをとって測定します。

なぜ歯の軸の角度が大事かというと釘で考えてみましょう。

釘も真上からトンカチで叩かれる分には強いです。

ただし横から叩かれると簡単に横に傾いてしまいます。

そのため歯の軸が前に倒れている人は抜歯をして正しい角度で上下の歯が当たるように治療します。

それによって長持ちしますので理想的な角度にするのは非常に大事です。

ほとんど口元が出ている人は歯の軸が前に倒れてしまっている人が多いです。

7.抜歯しないで治療する方法



抜歯しないで治療する方法は3つあります。

順番に説明していきます。


奥歯を後ろに移動させる

奥歯をさらに後ろに移動させてスペースを作ります。

その際、もし親知らずが後ろにあれば基本的には抜歯します。

抜かないとは親知らず以外の歯を抜かないと理解しましょう。

この後ろに移動させる量も限界はあります。

平均すると2〜3mmほど移動できるので左右後ろに移動できれば4〜6mmスペースを作ることができます。

ただしする際は骨があるかの診断が必須になります。

後ろに移動させるのはインビザラインが非常に得意になります。


《関連情報》なぜインビザラインは歯を抜かない非抜歯の治療が得意なのか!?


歯列の幅を拡大する

歯列の幅を広げることによってスペースができます。

このスペースを利用して矯正治療をしていきます。

ただしあまり拡大はできないため拡大単独で治療するのは難しいです。

ちなみに拡大しても顔の輪郭は変わりませんのでご安心ください。


歯と歯の間をわずかに削る

歯の表面にはエナメル質というものがありこのエナメル質をわずかに削ります。

削る量は0.3mmほどのごくわずかな量になります。

もし10箇所行えば3mmの隙間が獲得できます。


《関連情報》矯正治療で歯を削るストリッピングのメリットデメリットは?

8.抜歯が必要な症例

抜歯が必要な症例はどのような症例でしょうか?

抜歯のメリット、デメリットを考えてメリットが大きい場合や抜歯しないと治らない症例になります。

順番に見ていきましょう。


ガタガタが著しく強い場合


ガタガタが強い場合は歯を並べる隙間が足らないのに抜歯をしないで矯正治療をしようとすると前歯を前に出して並べ、横にも拡大して並べていきます。


ただし限度があります。

無理に並べるとどうなるでしょうか?

以下のようなことが起きます。

・前歯が前に出てしまい口元が出てしまい、横顔が悪くなる

 
・歯は歯槽骨というところに埋まっていますがそこから飛び出してしまい、歯肉が退縮してしまう

 
・前歯を前に出すため適正な歯の軸を取ることができず予後が悪い


などが起きます。

 
そのため必要に応じて歯を抜歯し、隙間を作って口元の改善、歯の軸を改善し良い噛み合わせを作っていきます。 

出っ歯が著しく強い場合

出っ歯の場合、軽度であれば上顎大臼歯を後ろに移動し隙間を作り出っ歯を改善していきます。


ただし後ろに移動できる量も限界があるため重度な方は基本的には前から4番目の歯を抜歯します。


そのスペースを利用して上の前歯を中に入れていきます。

前歯が中に入るため口元もスッキリしていきます。

受け口が強い場合

受け口の方は出っ歯と反対の矯正歯科治療になり、軽度であれば下の大臼歯を後ろに移動して隙間を作り受け口を改善していきます。

歯を後ろに移動させても治らない場合は抜歯をして下の前歯を中に入れていきます。

受け口の人は下唇が出ている事が多いのですが、下の前歯が中に入ることによりある程度改善されます。

ただし受け口の場合は下の小臼歯2本のみ抜歯すると噛み合わせをよくするのが難しくなるのであまり行いません。

 
また重度の受け口の場合は症例によっては外科矯正といって下顎の骨を切る必要もあります。

骨を切って治療するので重度の受け口の人も治療が可能です。

 

口元が出ている場合


上下顎前突という診断がつくことが多いのです。

一見噛み合わせは悪くないのですが口元を見ると突出しているという状態です。

 
これらの場合は基本的に抜歯で矯正歯科治療を行なっていきます。

抜歯することによって上下の前歯を中に入れることにより、口元も改善されていきます。

抜歯する部位


抜歯する場所も症例によって違います。

一番多いのが第一小臼歯といって前から4番目の歯になります。

また症例によっては第二小臼歯や大臼歯を抜歯することもあります。

どのように抜歯する部位、本数を決めるのでしょうか?

抜歯する必要性、抜歯する部位、抜歯の本数はセファロというレントゲンや歯並びによって決めていきます。

また奥歯を後ろに移動させる場合は親知らずがあると邪魔になるため抜歯することもあります。

 

まとめ

皆さん大事な歯なので抜歯するのが嬉しい人はいません。

ただしメリット、デメリットを考えてメリットが大きい場合に行うようにします。

抜歯自体は下顎の親知らずと違って歯茎や骨を削る事はないので痛みや腫れはほとんどないです。

また自分が抜歯する症例かも歯並びを見て確認して見ましょう。


最後までご覧頂きありがとうございました。

名古屋で矯正治療のお悩みがあれば無料矯正相談も受け付けています。

なんでもご相談ください。


日本矯正歯科学会認定医 歯学博士


増田 丈浩