矯正専門医ブログ

矯正治療のリスク、デメリットとその対策

:2021年2月17日 :2019年10月9日

                    

日本矯正歯科学会認定医 歯学博士

増田 丈浩

リスクを怖がらない女性

矯正歯科治療にリスクはあるの?
今日は大人の矯正治療のリスク、デメリットについてお話ししようと思います。

 

矯正治療は様々な恩恵がありますが、もちろんデメリットもあります。

『え、リスクなんてあるの?』

『じゃあどうすればいいの?』

色々な声が聞こえてきそうです。

対策もありますので、順番に詳しく説明していきます。

 

1.虫歯、歯周病のリスクが高くなる

模型の中で虫歯、歯周病をミラーで探している

矯正装置が入ることにより、歯ブラシがしにくくなるため、汚れがたまりやすくなります。

 

そのため、汚れがたまると、虫歯や歯周病が進行してしまうリスクがどうしてもあります。

関連サイト
固定式矯正装置装着患者へのカリエスリスク検査導入の有用性に関する研究

虫歯の治すタイミングや矯正中の虫歯の予防方法などは下記をご参考ください。


《関連情報》矯正と虫歯の関係|いつ虫歯を治すかなど疑問を全てまとめました!

虫歯、歯周病の対策

虫歯菌、歯周病菌

来ていただいた際、歯科衛生士が歯ブラシ指導を徹底的に行います。

 

これにより虫歯、歯周病のリスクを減らしていきます。


《関連情報》矯正治療でおきる歯茎のトラブルは??対策があれば怖くない!

 

またあまりに歯ブラシの回数や時間が短く、汚れがひどい方は装置を使用しません。

 

ご自身でしっかり磨けるようになって初めて、矯正歯科治療がスタートします。

 

ただしマウスピース矯正(インビザライン )でする場合は、装置の取り外しができます。

 

そのため歯磨きはしやすくなるため、歯磨きがしやすくなり虫歯や歯周病のリスクは減ると考えられます。

《関連情報》マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いは?

 

2.矯正装置の痛み、違和感

矯正装置が入って痛がっている女性

どのような装置を使用しても、やはり最初は違和感や痛みが出るリスクがあります。

 

これは人それぞれ程度は違いますが、基本的には3日ほどで矯正装置に慣れていきます。

 

中には全く痛みを感じない人もいらっしゃいます。

 

特に、ブラケットといってワイヤーを使用する装置は、痛みや違和感がでやすいです。

また最初は器具に慣れていないため頬や舌、唇に口内炎ができることもあります。


矯正装置の痛みの対策

ブラケット矯正にワイヤーが入っている

なるべく痛みが出ないように、ブラケット矯正をする際は、一番痛みが出にくい最も細いワイヤーを使用し、歯にかかる力を最小限にする必要があります。

 

また、装置が入った際も、すぐに矯正力をかけるのではなく、まずは矯正装置の違和感に慣れてから力をかけるよう配慮しております。

器具がぶつかって口内炎ができてしまった際は、ワックスを置いてカバーすると痛みが和らぎます。

痛いときに使用するワックス


《関連情報》矯正歯科治療の痛みを全てまとめました。対処法もあります!

3.話しにくい

話すことが難しいを表す女性

矯正装置がつくと、話しにくくなります。

特に裏側に装置がつく時に感じます。

話す時は舌を動かすため、装置が裏側にあるとぶつかるからです。

特にサ行、タ行、ラ行が話しにくくなることが多いです。

話しにくい時の対策

最初はやはり装置がつくと、話しにくいです。

ただし、話しにくくなるリスクはありますが、時間が経つと慣れてきますので、うまく話せるようになります。

また、どうしても気になる人は、マウスピース矯正をすると裏側に装置がつかないため、話しにくさはほとんどありません。

 

4.顎関節症状になるリスクがある

顎関節が見える模型

顎関節は、頭に宙吊りでぶら下がっているため、不安定になっています。

 

そのため、矯正治療によって歯が動くことにより、噛み合わせが日々変化していきます。

 

それにより、顎が開かなくなったり、痛みが生じるリスクがあります。

また、部分矯正をすると噛み合わせがの治療はできないため、顎関節症になるリスクは通常より高いです。


《関連情報》部分矯正と全体矯正の違いって知っていますか?

 

顎関節の対策

顎関節症は、矯正歯科治療治療を始める前の診断が、非常に大事になります。

 

顎関節をしっかり診断し、状態が悪ければまず先に顎関節から治療をするようにしていき、矯正歯科治療中に顎関節症が発症しないようにしていきます。

 

治療としては、スプリントを使用して現在の噛み合わせをスプリント上で良い噛み合わせを与えて、顎にかかる負担を減らしていきます。

 

また生活習慣などとも大きく関わってくるため、こちらも指導する必要があります。

例えば、頬杖や寝る姿勢によっても顎の負担がかかってしまいます。

 

《関連情報》 矯正治療で顎関節症にならないようにするには

 

5.歯根吸収するリスクがある

歯列模型

矯正歯科治療することにより、歯根が吸収し、短くなるリスクがあります。

 

乳歯が抜けて永久歯が生えたばかりの時に、すぐに力を加えるとより短くなることがあります。

理由としては、萌出してすぐの永久歯は、まだ完全に根っこが完成していません。

そのため、早期に力をかけると根っこが曲がってしまったり、短くなってしまいます。

関連サイト
矯正治療に伴う歯根吸収のリスクの診断法に関する研究

 

歯根吸収の対策

急激に強い力を歯に対して与えると、歯の根っこが吸収する可能性が強くなるため、できる限り弱い力で行う必要性があります。

 

また、永久歯が生えたばかりの時はワイヤーはつけず、力があまりかからないような工夫をする必要があります。

 
そのため、小学校低学年でワイヤーをつけて、歯を動かすのはおすすめではありません。

また、インビザライン であれば、一度に動かす移動量は少ないため、歯にかかる負担は少ないとはいわれています。

 

6.歯茎が下がる、歯の隙間が空く

歯ブラシで歯肉が腫れるのを防ぐことが大事

歯周病で骨が溶けてしまっている人は、その状態で歯を動かすとさらに炎症が広がり、歯茎が下がってしまう可能性があり、そのリスクは理解するべきでしょう。

また、ガタガタがあって矯正治療をすると、キレイに並びます。

しかし、今まで歯が重なっていたので気づかなかったのですが、きれいに並ぶと、歯と歯の間が空いてしまうことがあります。

この状態をブラックトライアングルと言います。

ただし、隙間が開いた状態は異常ではないので問題はありません。


《関連情報》矯正治療でおきる歯茎のトラブルは??対策があれば怖くない!

歯茎、歯の隙間の対策

まずは矯正治療を始める前に歯周病の検査をします。

検査の結果、歯周病があれば、まずは歯周病の治療をしてから矯正治療を始めれば、歯茎が下がるリスクが抑えられます。

また、歯の隙間が空いてしまう場合は、ストリッピングといって歯と歯の間をわずかに削ると、この隙間が減少しますので気になる人には行います。

歯と歯の間に隙間が空いている
上図は削る前です。

歯と歯の間に隙間があります。

歯の接触面積が増え、歯と歯の間の隙間が埋まっている
上図は歯と歯の間を削った状態です。

隙間が減ったのがお分かりでしょうか。


《関連情報》矯正治療で歯を削るストリッピングのメリットデメリットは?

7.歯髄炎が起きるリスクがある

歯髄炎を治療している

歯を移動させると、神経に触るような痛みやズキズキする可能性があり、無視できないリスクになります。

歯を動かすことによって、歯の中の神経が歯髄炎になったり、場合によっては神経が死んでしまうこともあります。

歯の神経が死んでしまうと、神経の治療が必要になります。

そのまま置いておくと、歯の色が変色することもあります。

歯髄炎の対策

まずは矯正治療をする際に、強い力をかけないことが非常に大事になります。

力が強いと歯髄炎の症状が起きてしまいます。

また、歯髄炎になる原因として、骨のないところに歯を無理に動かそうとすると起きてしまいます。

そのため、無理のない正確な治療計画が重要になります。

8.歯がすり減ったりヒビが入る

歯が噛み合ってヒビが入っている

矯正装置が入ると、だんだん歯が動いてきます。

そうすると、日々噛み合わせが変わっていきます。

それによって、治療過程で歯が強くぶつかったりすることが出てきます。

その時に、歯がすり減ったりヒビが入ることがあります。

歯のすり減り、ヒビの対策

矯正治療する上で、日々噛み合わせが変わることは防ぎようがありません。

対策としては、マウスピース矯正を選択すれば歯の表面が覆われているので、すり減ることはありません。


ただし、すり減りやヒビは矯正治療をしてない場合でも、ご飯を食べたり歯ぎしりによって起きる可能性があリます。

9.抜歯する可能性がある

器具を使用して歯を抜歯している

矯正治療は、できれば歯を抜かずに治療を行います。

しかし、ガタガタが強かったり出っ歯が著しく大きいと、歯を抜く可能性が出てきます。

また、抜歯のリスクとして抜歯により前歯が中に入ることによって舌のスペースがなくなる可能性があります。

そのようなことが起きると舌根沈下が起き、睡眠時無呼吸症候群になる可能性があります。

抜歯の対策

抜歯か非抜歯の判断を、正確にする必要があります。


正確な診断ができていないと、非抜歯で治る症例も抜歯で治す先生もいるかもしれません。

ただし、抜歯の症例を無理に非抜歯で並べると、様々な弊害が出るので注意が必要です。


《関連情報》矯正で抜歯は必要なの!?

そのため口元の突出がある場合は、非抜歯で治療をすると、口元はあまり治りません。

その場合は抜歯をし、Eラインがきれいになる選択も必要になります。


《関連情報》矯正でEラインや唇が変化するって本当?


また、インビザライン というマウスピース矯正は、歯を後ろに移動させるのが非常に得意になります。

この『歯を後ろに移動させる』ことによって、抜歯になる症例が昔よりだいぶ減りました。


《関連情報》なぜインビザラインは歯を抜かない非抜歯の治療が得意なのか!?

抜歯のリスク回避として、舌のスペースがなくならないようにすることは大事です。

セファロレントゲンで気道の容積を確認していきます。

気道の容積があまりにも狭い場合は抜歯をしないほうが良い場合もあります。

さらには、歯列の幅が狭い場合は、幅径を拡大し、なるべく舌の居場所の面積を減らさないような治療が大事になります。


10.治療期間が長い

矯正の治療期間が長いイメージを表す時計

矯正の期間は長く、年単位になります。

大体2年から3年でしょうか。

また人によっては歯の動きが遅い人もいるので予定より期間が長くなる人もいます。

セラミック矯正は治療期間は短いですがリスクが高い治療になります。


《関連情報》セラミック矯正のメリット、デメリットとは!?

長い治療期間の対策

治療期間を短くするには、患者さんが使用するゴムや装置をしっかり使用することが大事です。

ゴムの使用をサボってしまうと、期間が長くなったり治療ゴールが下がってしまいます。


《関連情報》歯列矯正で使用するゴムってどんなもの?

またワイヤー矯正でインプラント矯正というものがあります。

インプラント矯正ができる症例であれば、使用すると治療期間が短くなりますので、検討してみても良いかかもしれません。


《関連情報》インプラント矯正|目的と疑問をまとめました!


また矯正治療の期間を短くする方法はいくつかあります。

興味ある人はご覧ください。


《関連情報》矯正を短期間に早く終わらせる方法とは!?

また、子供の場合は、どうしても矯正治療の期間が長くなりがちです。

ですが治療をするタイミングというものがあります。

症例によっても違いますが適切な時期に介入できるとより、効果が高くなります。

詳しくは下記をご参考ください。


《関連情報》子供の矯正は何歳から?小児矯正のタイミングをまとめました

 

11.外科矯正

治療をするのに必要な器具

症例によってはワイヤー矯正やマウスピース矯正だけでは直せない場合もあります。

その際は外科矯正といって上顎骨もしくは下顎骨を切って治療を行います。

顎が左右にズレており顔が曲がっている人、著しい出っ歯や受け口の場合は対象になる可能性があります。

外科矯正の対策

外科矯正はどうしても入院や痛みが伴います。

ただしその分骨格から治療ができるためより良いゴールを目指すことができます。

どうしても外科矯正がしたくない場合は歯のみで治療を行います。

ただし治療のゴールが下がってしまうためしっかり先生に相談してどこが変わってどこが変わらないかを確認しましょう。

12.後戻りのリスク

歯が動いて元に戻っている

矯正歯科治療後は、歯が元にあった場所に戻る、後戻りのリスクがあります。

 

特に移動量が大きいと戻る量も大きくなります。  

ガタガタが強かった人はガタガタになりやすいです。

 
一方抜歯した場合は隙間が空いてくることもあります。


《関連情報》矯正治療後に後戻りした!どうすればいいの?

 

後戻りの対策

後戻りしないために必要な保定装置が口の中に入っている

装置除去後にはリテーナー(保定装置)で後戻りを最小限にしていきます。

 

保定装置は固定式と取り外し式の2種類があります。

 

装着期間はおよそ2年から3年になります。

保定は非常に大事でこの装置を使用しないと簡単に後戻りしてしまいます。

 

《関連情報》矯正治療後の保定装置(リテーナー)の悩みが全てがわかる!

 

13.30代、40代のリスク

大人がリスク対策をイメージしている



30代、40代から矯正治療をするリスクは何があるのでしょうか?

年齢が上がるほど、歯周病にかかっているリスクが高いため、矯正の難易度が上がる可能性があります。

また歯周病が進行していると、通常の人より歯茎が下がるリスクも高くなります。

歯の移動速度は年齢とともに代謝が落ちるため、スピードは遅くなる可能性はあるかもしれません。  

また、若年者よりは装置になれる期間が長い可能性はあります。


30代、40代のリスク対策

先生がリスクが高いところを説明している
やはり一番は歯周病のリスクが高いですので、矯正治療前に歯周病の検査、治療をすることにあります。

また矯正治療中も歯周病の治療を継続することが大事です。

ただし、年齢が上がっていても、関係なく矯正治療はできるので、噛み合わせが原因で歯が抜ける可能性があるのであれば、歯の寿命を長くするためにも行うべきでしょう。


まとめ

矯正治療には様々なリスク、デメリットがあります。

ただしどれも対策がありそこまで悲観的になるものではありません。

メリットとデメリットをしっかり検討してメリットが大きい場合に矯正歯科治療をすればいいです。

矯正の最大のメリットは見た目もキレイになりますが歯が長持ちすることになります。

そのため矯正治療は最大の予防歯科と言われています。


最後までご覧頂きありがとうございました。

名古屋で矯正治療のお悩みがあれば無料矯正相談も受け付けています。




日本矯正歯科学会認定医 歯学博士


増田 丈浩