日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
増田 丈浩
インビザラインで失敗しないためには
インビザラインを始めることは、患者さんにとって大きな決断です。
そのため、絶対に失敗したくないという気持ちも強いでしょう。
ではどのような失敗があるのでしょうか?
「噛み合わせが悪くなってしまった」
「歯茎が下がってしまった」
などと後悔の声もあります。
また、失敗しないためにはどうすべきかも大事になります。
患者さんがしなくてはいけないこともありますし、矯正歯科の選び方も大事になります。
では、インビザラインの失敗についてお話ししていきます。
目次
1.インビザラインでの失敗例
インビザラインでどのような失敗があるか確認していきましょう。
もちろん失敗には原因があるため、原因に基づいて治療すれば、失敗するリスクは大幅に減らすことができます。
インビザラインをしてから噛み合わせが悪くなった
インビザラインでなりやすいのは、奥歯が噛まなくなることが多いです。
奥歯が噛まなくなると物が噛めませんので失敗したと感じる人も多いでしょう。
奥歯が噛んでいないと、必然的に前歯でしか歯が当たらないため、前歯の負担が大きくなってしまい、歯の寿命が短くなってしまいます。
顎関節症になった
先ほどの奥歯が噛んでいないと関連しますが、奥歯が噛んでいないと顎の負担が大きくなります。
そうすると顎関節症を発症する場合があります。
また、奥歯が噛んでいても顎関節症になることはあります。
矯正治療で必要な噛み合わせを与えることが、顎関節症にならないようにするための大事なことです。
《関連情報》矯正治療で顎関節症になることもあるの?
歯茎が下がった
インビザラインは通常の矯正治療より歯茎が下がる可能性があります。
これはパソコン上でシュミレーションして作成する為、歯茎や骨を考えずにシュミレーションを作成してしまう為です。
その為、CTやセファロをとって骨の状態を確認し、骨の状態から歯の軸を計算して移動を考える必要があります。
また、インビザラインの場合、ワイヤー矯正と違って力が強くかかりやすい傾向にあります。
その為、気付かず、悪い方向に動かしていると、歯茎が下がる原因になることもあります。先ほどの奥歯が噛んでいないと関連しますが、奥歯が噛んでいないと顎の負担が大きくなります。
《関連情報》矯正治療でおきる歯茎のトラブルは??対策があれば怖くない!
治療が終わらない
インビザラインは追加アライナーといって、再び歯型を取り、クリンチェックというシュミレーションを作ることがあります。
治療が治っていないと、この追加アライナーを何度もする可能性があります。
しっかり始めの段階で計画ができていないと、ずっと矯正治療が終わらない可能性があります。
ただし、基本的には何度かは追加アライナーをすることがほとんどですので、4年も5年もしている場合は失敗の可能性が高いです。
矯正治療の期間の目安はありますので、詳しくはこちらをご覧ください。
《関連情報》矯正治療の期間はどれくらい?子供と大人で期間は違うの?
2.インビザラインで失敗、後悔しないためには
インビザラインで後悔しないためにはどうすればいいでしょうか。
様々な要因がありますが、大きく分けて2つ問題があります。
1つは患者さんに原因がある場合、もう1つは矯正歯科に問題がある場合です。
まずは自分自身で防げる失敗を順にお伝えします。
虫歯や歯周病にならないようにする
インビザラインをする前に、もし虫歯や歯周病があれば、しっかり治療することが大事になります。
もし、虫歯や歯周病がある状態でインビザラインを進めてしまうと、中断する可能性があり、再度歯型を取る必要が出てきます。
それによって期間も長くなってしまいます。
《関連情報》矯正と虫歯の関係|いつ虫歯を治すかなど疑問を全てまとめました!
インビザラインの装着時間を守る
装着時間は、矯正歯科の指定する時間を必ず守るようにしましょう。
20時間〜22時間の装着時間を指定する場合が多いです。
装着時間が短いと、歯がしっかり動かないため、予定通り歯が動きませんので失敗の原因になります。
予定通り動いてないのに、次のアライナーに進むと、さらに悪い方向に歯が動いてしまうので注意が必要です。
インビザラインの交換時期を守る
インビザラインの交換時期も非常に大事です。
後悔しないためにも、使用時間も守る必要がありますが、交換時期も矯正歯科の指示に従うようにしましょう。
一般的には7日〜14日の交換が多いです。
もし指示された日数が来ても、まだきつい感じがあれば1日、2日長く使用した方が良いです。
アライナーチューイを毎回使用する
アライナーチューイと呼ばれるゴムの板があるのですがアライナーを装着する際、必ず使用することが大事です。
アライナーチューイを使用しないと、歯とアライナーにわずかな隙間ができてしまい、歯がうまく動かず失敗の原因になります。
そのため、装着する際は必ず使用しましょう。
外でアライナーを脱着する可能性もあるので、持ち歩く習慣を作ると良いでしょう。
顎間ゴムを使用する
顎間ゴムといって、自身で使用するゴムを使う場合があります。
主に奥歯を後ろに移動させたり、抜歯をする場合は使用することが多いです。
このゴムを指定された時間使用しないと、歯が上手く動きません。
上図のように歯を後ろに移動させる場合、ゴムを使用しないと、前歯が前に出てしまうことがあります。
《関連情報》歯列矯正で使用するゴムってどんなもの?
3.インビザラインで失敗しないための矯正歯科の選び方
インビザラインで失敗しないためには矯正歯科の選び方も大事です。
こちらも順に説明していきます。
拡大鏡を使用している
これはどういうことでしょうか。
あまり言われておらず、わからない人も多いかもしれませんので詳しく説明します。
インビザラインをするのに非常に重要な要素としてアタッチメントというものを使用します。
アタッチメントについて詳しく知りたい人は下記を参考にしてください。
《関連情報》インビザラインのアタッチメントって目立つ?痛い?
アタッチメントをつけるときに樹脂を盛ってつけます。
アタッチメントの大きさは決まっていますが、どうしても余分な樹脂がはみ出してしまいます。
この余剰な樹脂をきれいに取らないと、計画通りに歯が動きません。
何故でしょうか。
アライナーが歯の表面に覆いますが、アタッチメントの周りに余剰な樹脂があると、そこが浮いてしまい、適合が悪くなってしまいます。
そのため、裸眼では細かいところは絶対に見えませんので、拡大鏡を使用して余剰な樹脂を取ることが必ず必要になります。
拡大鏡を使用している矯正歯科は少ないですので、注意しましょう。
拡大鏡の倍率もあまり低いと、効果は薄れてしまいます。
矯正歯科学会の認定医を持っている
矯正治療は誰でもできます。
そのため、変な言い方をすると卒業した手の全くできない人も、矯正治療をすることができてしまいます。
その一定の基準をクリアしているのが日本矯正歯科学会の認定医になります。
関連サイト
日本矯正歯科学会 認定医・臨床指導医名簿一覧
もちろんその中でもレベルの差はありますが、大きく外すことはないと思います。
認定医を持っていない先生でうまい先生もたくさんいらっしゃいます。
ですが、探すのが難しいため、信頼できる人からの紹介で行かれると良いでしょう。
《関連情報》良い矯正歯科の選び方|歯科医師が見る8つのポイント
インビザラインの経験が豊富
インビザラインは従来の矯正治療と異なります。
そのため、ワイヤー矯正は上手でもインビザラインの治療はあまりしていない先生もいらっしゃいます。
なので、ある程度毎年インビザラインの症例がある矯正歯科の方が良いでしょう。
ただし、ここで注意が必要なのが『症例数が多い方が上手なわけではない』ということです。
もちろん症例数が多くて上手な先生もいますが、経営が上手で患者さんがたくさん来るから、症例数が多い場合もあります。
その辺りはご自身の判断になってしまいますが、初診に行って見て話を聞いて質問にしっかり答えられるかも1つの判断になります。
まとめ
インビザラインは非常に有効な方法です。
ですが、患者さん自身も頑張るべきところがあり、アライナーやゴム、チューイをしっかり使用しないと上手く治りません。
また矯正歯科も拡大鏡を使用していたり、矯正の認定医を取得している、症例数も多いなどが1つの判断基準にはなるでしょう。
皆さんも失敗しないように色々な面から矯正歯科を確認すると良いでしょう。
最後までご覧頂きありがとうございました。