日本矯正歯科学会認定医 歯学博士
増田 丈浩
子供の矯正で失敗や後悔しないためには
子供の矯正は非常に効果があります。
ただし、選び方を謝ると効果が出ない場合や、場合によっては悪くなってしまいます。
「とりあえず顎の幅を広げましょう」
「ガタガタが強いので抜歯しましょう」
と歯科で言われたこともあるかもしれません。
ちょっと待ってください。
本当にそれでいいかをまず疑いましょう。
子供の矯正で、色々な失敗した方を見てきたのでどのような失敗があるか、順に説明していきます。
目次
1.子供の矯正で失敗しないためには検査が大事
子供でも大人でもそうですが、矯正治療をする前の検査が非常に大事です。
検査、診断がなくて矯正治療はあり得ません。
検査とは
1.歯型をとる
2.頭部X線写真(セファロ)、パノラマを撮影
3.顔の写真3枚以上、口の写真5枚以上
4.顎関節の診査
は最低でも必要になります。
特に2の頭部X線写真(セファロ)は非常に大事で、このレントゲンを取らずに治療する歯科も実際は多いです。
検査を行い、何が原因で歯並びが悪くなっているかを診断します。
その診断に基づいた治療をしないと歯並びは治りません。
子供の矯正はメリットが大きいですが、みなさん疑問も多いのです。
良くある疑問は下記にまとめてあります。
《関連情報》子供の矯正治療について|疑問にお答えします
2.失敗例① 歯を急に抜かれて後悔
これは、もはや矯正と言えないかもしれませんが、「ガタガタになりそうだから抜歯しましょう」と言われ、歯を抜かれてしまった人もいます。
もし、歯科で何の検査もなく、抜歯しましょうと言われたら絶対にやめてください。
その抜歯は本当に必要でないかもしれません。
抜歯が必要か必要でないかの判断は、先ほどお伝えした検査を行い、診断した上で判断します。
もちろん抜歯しなくてはいけない症例もありますが、急に言われる場合は絶対してはダメです。
3.失敗例② 子供の矯正がずっと終わらない
「子供の矯正を何年もしています」という人をたまにいます。
もし、最初の状態より良くなっていれば何の問題もありません。
子供の矯正治療は、ある程度長くなることが多いです。
長くなると、費用もかかりますので余計気になるところです。
《関連情報》子供の矯正の費用はいくら?|小児矯正でかかる費用をまとめました!
ただし、最初の状態とほとんど変わっていない場合は注意が必要です。
同じ装置が、ずっと何年も入っているのはおかしい可能性があります。
また、矯正治療を始めるタイミングというものもあります。
無闇に長くなってしまうと、子供の負担も大きくなってしまいます。
《関連情報》子供の矯正は何歳から?小児矯正のタイミングをまとめました
ずっと同じ装置が入っている子供で多いのが、拡大床がずっと入っている子供です。
拡大床は、拡大できる量もそこまで大きくないので、何年も入っているのはおかしいです。
このような場合は、検査をしていないか診断ミスの可能性があるでしょう。
矯正治療の期間はある程度目安はつきます。
詳しくはこちらをご覧ください。
《関連情報》矯正治療の期間はどれくらい?子供と大人で期間は違うの?
4.失敗例③ 拡大床の使用で治らない
拡大床は悪い装置ではありません。
ただし、使い方が悪いと、とんでもないことになってしまうので注意が必要です。
実は矯正治療は誰もができます。
国家試験さえ受かれば、標榜できてしまいます。
ただし、矯正治療は専門的な知識が必要で、正直、大学を卒業しただけでは治せません。
この拡大床という装置は簡単に作ることができ、簡単に幅を広げることができるため、導入しやすいです。
そのため、知識のない歯科医師がよく使用することも多いのです。
よくあるトラブルとしては
・拡大しすぎで噛めない
・何年経っても治らない
・歯を拡大しすぎで歯茎が下がってしまっている(骨から飛び出ている)
・出っ歯なのに拡大してるため、いつまでも出っ歯が治らない
《関連情報》子供の出っ歯の矯正治療について|疑問が全て解決します
またよく言われるのが、「拡大床で顎を広げましょう」と先生に言われることがあるかもしれません。
この装置では顎は絶対に広がりません。
この拡大床でできるのは、骨の幅の範囲内で歯を動かすことだけです。
骨の幅を広げるのは、急速拡大装置という装置だけですので注意しましょう。
矯正治療には様々な装置が入りますので詳しくは下記をご覧ください。
《関連情報》子供の矯正|装置の種類は大きく分けて3種類あります!
5.失敗例④ 無理に抜歯しないで治す
抜歯に関しては、誰もがしたいと思わないでしょう。
特に子供の矯正をするのは、抜歯しないようにするために、早期から開始する目的もあります。
大人から矯正治療を始めると、抜歯になってしまう症例も、子供から始めれば抜歯にならない症例はたくさんあります。
《関連情報》子供の矯正と大人の矯正の違いは何?|疑問をまとめました
ですが、抜歯をしないといけないこともあります。
しっかり検査、診断をして決める必要があります。
もちろん、できれば抜歯をしない治療方針は必ず考えます。
ですが、骨の幅だったり、口元、歯の軸など様々なことを考慮して、抜歯、非抜歯の判定を行います。
《関連情報》矯正治療の抜歯について|疑問をまとめました
よくあるのが無理やり拡大し、前歯も前に出して並んでいる場合があります。
このような状態は、果たして予後がいいのでしょうか?
無理やり並べて起きる事を順番に説明します
前歯が前に出ているので口元も出てしまう
口元が出てしまうとEラインから口元が出るため、横顔が美しくありません。
悪い言い方をすると、ゴリラみたいな口元になってしまいます。
拡大しすぎで噛めない
拡大しすぎると骨の中から歯が飛び出してしまいます。
そうすると歯茎が下がってしまいます。
最悪、歯の神経が死んでしまうこともあるので、歯の色が黒くなってしまったら必ず止めなくてはいけません。
本来は拡大量というものは診断して決めるものです。
歯の軸が傾きすぎて、歯の予後が悪い(歯の寿命が短くなる)
前歯が前に出てしまうと、適正な歯の軸を超えてしまいます。
歯が前に倒れすぎると、将来、どんどん歯が倒れていく可能性があります。
歯の軸、角度はセファロレントゲンを撮影して角度を決め、治療するのが本来の姿です。
6.失敗例⑤ 小児歯科で子供の矯正をする
初めにお伝えしたいのが、小児歯科を否定しているのでは決してありません。
小児歯科の先生で矯正治療も上手い先生はたくさんいらっしゃいます。
ただし、一つ知っていただきたいのが、矯正治療と小児治療は別物です。
要は学問が違うのです。
小児治療のメインは小児の虫歯治療やフッ素などの予防処置になります。
《関連情報》矯正と虫歯の関係|いつ虫歯を治すかなど疑問を全てまとめました!
事実、大学で習う小児歯科の本には、矯正のことはほとんど出てきません。
出てくるのは、萌出誘導といって、うまく大人の歯が萌出するように促す程度です。
例えば、虫歯で早期に乳歯を抜歯したとします。
そのまま放置しておくと、奥歯がどんどん前に来てしまい、大人の歯が萌出するスペースがなくなってしまいます。
このように乳歯がない状態の時には「保隙装置を入れ、スペースを保つ」という治療くらいになります。
ですが、矯正治療とは別物になります。
「小児歯科なら小児矯正もできる」と思わない方が賢明です。
もしするのであればしっかりとした検査を行うのか、また日本矯正歯科学会の認定医を持っているか確認しても良いでしょう。
関連サイト
日本小児歯科学会
まとめ
子供の矯正は大変有用な治療にります。
だからこそ失敗はしたくないと考えている方も多いと思います。
しっかりとした検査が大事になってきますので、先生の思いつきで抜歯したり、とりあえず拡大しましょうというのはあり得ません。
また小児歯科も小児矯正が得意なわけではないので注意してください。
しっかり診査、診断をする先生に見てもらいましょう。
《関連情報》良い矯正歯科の選び方|歯科医師が見る8つのポイント
最後までご覧頂きありがとうございました。